4-12

昼食後、午後の授業を受けに行くと席を立ったヘリオスフィアに、


「今日は私の授業が終わり次第帰宅しよう」


そう言われたフレックは、今日入力した分の記録の間違いが無いかの確認作業をしていた。

追加で入力作業をと思ったのだが、今日の分は今日の分で終いにすること、とヘリオスフィアが言って資料も持って来てくれなかったのだ。

いつか目を盗んで運んで作業進めるんだ、と心に決めつつ確認、入力済みの資料を机の脇に置かれた破棄ボックスに放り込む。




二つ鐘が鳴ってから、ヘリオスフィが戻って来た。

その頃には確認作業も終わっていて、フレックは危うくソファでうたた寝しちゃおっかな、なんて席を立つところだった。

危なかったと冷や汗隠し、フレックはニッコリお待ちしておりました、と姿勢正した。


「破棄まで終了、か。流石フレックだ。素晴らしい。本当にありがとう」


作業完了、机の上も綺麗に片していたフレックに、ヘリオスフィアが微笑むと共に労いの言葉をかけてくれた。

東部じゃ上司も部下も終わってもオツ!と言う暇あれば言うって感じだったから、しっかりちゃんと褒めらたフレックは、面映ゆくってもじもじしてしまった。

そうこうしている内にヘリオスフィアが、今日処理した分と同じ量の資料を机の上に運んで来る。


「これは明日の分だ。一限目が実技でな、すまないがここに到着次第私は出る。だから、これは、明日の分だ」


「はい」


「…さて、すまないフレック、急ぎの報告書があってな。少し待ってくれ」


「分かりました」


本当に急ぎなのだろう、珍しく乱雑に椅子に座ったヘリオスフィアが、記録板を引き出しから取り出した。

フレックは急いでいるのに優雅な文字入力作業を横目に、明日の分と置かれた資料に手を伸ばした。


「それは明日の分だと言った筈だ」


「ちょっと、だけ」


「フレック」


「はぁい…」


記録板に視線を落としたままなのに行動を把握されたフレックは、暇つぶしですので?とヘリオスフィア観察に時間を費やした。

費やすに値する眉目秀麗さに、フレックは全部の時間を捧げたいその手段はこれ如何にと妄想を膨らませ続けた。




その訪問は突然だった。


「こんにちわぁ、リオ。遊びに来たわぁ」


甘い砂糖菓子のような声だった。

とても綺麗で美しい女生徒だった。

銀糸の髪に虹色の瞳の少女に、フレックは見覚えがあった。

夢で見た聖女だ。

けれど夢で見た楚々とした感じは失われ、聞いていた話通りの駄目な女生徒だぁ、とフレックは口を半開きにしてしまった。


「シンシア・ナタリエ。許可なく入室するなと何度言えば分る」


それは凍てついた声色で、フレックは膝にマントが掛かっているのに寒くて凍えた。

なんて、なんて冷たい反応なのか。

いやしかし、当然の対応であった。

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