4-11
フレックのそんな心配をよそに、ヘリオスフィアはフレックをソファへ座らせ、空間魔法の領域からバスケットを取り出した。
中をそっと覗くと、そこには美味しそうなサンドイッチが並べられていた。
「わぁ、これ、あれだ」
見覚えのある具材が挟まったそれに、フレックは思わず唾を飲みこんだ。
「沢山あるから、沢山食べるといい」
そう言ってヘリオスフィアがフレックに大きなサンドイッチを差し出す。
「あ、ありがとうございます」
フレックは受け取ってからすぐ包み紙を少しだけ剥がし、急いでサンドイッチを頬張った。
思わず目を瞑って涙滲ませ、んんっと唸ってしまう。
真っ白な柔らかな食パンに、時期の野菜とそれに合う肉で作られたテリーヌを挟んだサンドイッチ。
フレックはこれが大好きだった。
食パンもテリーヌもニューノ家自慢の一品で、フレックはそれらを別々で頂いた時サンドイッチにして食べたい!とわがままを言った。
ヘリオスフィアはそれを快諾し、料理人に注文。
そこから昼食や軽食はこのテリーヌのサンドイッチが定番になった。
野菜の甘みに肉の旨味、ふんわり食パンに包まれて、とっても美味しいサンドイッチ。
色々あって久しぶりの味に、フレックは夢中でかぶり付き続ける。
そうしてペロっとひとつ平らげてしまったフレックの前に、ヘリオスフィアが湯気が溢れるスープマグを置く。
中身はコーンスープだったので、フレックはマグに飛びつきゆっくり口をつけた。
そんな様子を横目に、ヘリオスフィアもサンドイッチを一口齧る。
「ああ、フレックの好きな白身魚だったか…食べるかい?」
「え」
そう言われたフレックは、どうぞって差し出されたサンドイッチを見つめる。
一口欠けてるサンドイッチ。
でも美味しさ損なわれてない、むしろ魅力増してる。
一度ヘリオスフィアを見、美味しいよって空色語るから、フレックは食欲に負けサンドイッチに噛みついた。
むふーと、自然に唸ってしまう美味しさだった。
フレックの大好きな白身魚のテリーヌは、変わらぬ、そして久し振りだからこそより一層美味しくて、ついつい夢中になって食べ進めてしまう。
「フレック」
「あ、ごめっ」
半分以上食べてから、ヘリオスフィアの食べかけであることを思い出したフレックは顔を青ざめた。
「口に付いている」
「え、あ」
けれどヘリオスフィアは怒らず、優しくフレックの口元をふく。
その優しいまま微笑んで、全部食べていいよってサンドイッチを差し出して来る。
「君は、本当に好きだな」
ヘリオスフィアの口から零れる『好き』という単語に、フレックはそういう意味じゃないって分かっても照れを隠せなかった。
「え、へへ、ひゃい、しゅきです」
「沢山ある。沢山食べてくれ」
「は、い」
元気にうん!って言い掛けたのをサンドイッチと共に飲み込んで、フレックは用意してもらった昼食をデザートのプリンまでしっかり美味しく堪能した。
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