4-6
貴族ではなく騎士として、近くてなお遠い守護者への敬称『ロッカ卿』。
フレックは貴族としてもはやなんのあれもこれもそれも無い上に、成り上がろうという気持ちすら無い。
あるのはヘリオスフィアの邪魔にならないようにするだけ、だ。
だから貴族として『ニューノ様』と呼ぶよりも、ひとりの人間として『ロッカ卿』と呼ぶ方が距離がありますと周囲にアピール出来る良い案!と思ったのだが。
けれど当のヘリオスフィアが、もの凄く嫌そうに「好きに、呼ぶように」低く唸る様にそう言うから、ああ、自分に名前を呼ばれること自体が嫌なんだってフレックは理解して、胸がズキズキ痛んだ。
それでも手も体も離されない。
それは騎士としての当たり前をされている。
フレックは、心の中で勘違いした馬鹿な子と一緒に抱き締め合って慰め合った。
「ロッカ卿…」
「まだ階段を上る。それにここは新校舎だが、目的地は旧校舎だ。古い造りだ、幾つか段差もある」
長い廊下を歩くので、フレックはもう一度ひとりで歩ける旨を伝えようとした。
けれど目的地はまだ先のようで、角を曲がると言われたとおり急な段差が現れ、ひとりで超えるには手摺が必要だったが存在しなかった。
旧校舎、という言葉にも納得出来た。
確かにこの段差の前と後では、建物の造りが明らかに違う。
古い木造中心の建物で、天井も少し低い。
今超えた段差の後に現れた、階段も急に感じられた。
階段を上る足取り、ヘリオスフィアが支えながら「何時からだ」そう問うので「かれこれ1年ほど」つい最近だからまだ体が慣れてないんですって言おうとして重い沈黙がフレックを押しつぶした。
それが怒りなのか、苛立ちなのか、フレックには分からなかった。
だって段差が一杯だから、密着がすごいから。
顔なんて、見れなかった。
旧校舎の古びたタイルの廊下をフレックはまだヘリオスフィアに介助されながら歩いていた。
先ほどから会話途絶えて黙って歩いてて、なのに喉がからからに乾いてる。
これなら喋って乾燥してるほうがまし、だけどなにを話せばいいのかと。
もう少しだとヘリオスフィアが囁くので、フレックは会話の糸口に飛びつこうとした。
「おはようございます、ニューノ様」
フレックは、可愛い声だなって思った。
近年、ここ最近、女性の声とは魔境のボスだったので、可愛い女の子の声はフレックにはとても新鮮に聞こえた。
家族は女性じゃないので自然と除外されており、それが姉にバレたらお前のそーゆーとこは再教育な?が始まってしまうのをフレックはなんか予期して悪寒を覚えた。
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