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カミオカンデ王国の王立学園は王都の端に存在する。
また騎士学校も併設されている為騎士団が在住しており、その治安の良さから王国の研究室やその関連施設等が建設された。
人が集まれば商業施設も賑わいを見せ、端といっても交通の便は王都中心部よりも良くなり、近年は学園都市と呼ばれるまでになっていた。
フレックとヘリオスフィアが乗った馬車はそんな学園都市の中心部にあるカミオカンデ王立学園へと到着した。
ヘリオスフィアが扉を開けた御者へ礼を告げ馬車を降りていく。
フレックも遅れまいと杖を取り、馬車の床に一度腰を下ろした。
そこから階段に左足を掛けつつ滑り降りようと、した所で「フレック!?」ヘリオスフィアの珍しく焦った呼び声に動きを止めた。
「どうされましたか?」
「どうされましたか、ではない。何をしているんだ」
ヘリオスフィアは困惑を眉間のシワに寄せ、フレックから杖を取り上げ傍に控えていた御者に手渡す。
開いた手がどうとも出来ぬようにと、フレックの肩と手を握る。
これじゃあ降りれない、とフレックは困った。
後、気軽なボディタッチ、ホント止めてって思った。
フレックは右足を悪くした影響で、歩行はそこそこ遅くなり、段差の下りが苦手になった。
そして上りが更に苦手、容易に出来なくなった。
だから馬車に乗るには床部分に両手をつき左足を階段に引っ掛け身を捩じる様に上らなければならなかった。
その反対を、今度は滑り降りようとしただけだったのだが。
「まさか、君は、足が…?」
ヘリオスフィアが両目を見開き、御者が持つ杖へ視線を、ゆっくりフレックの足を、最後に片目を見つめ、顔を歪ませた。
「えーと、はい。右足を、はい…」
フレックはいたたまれなくなった。
家族が説明したと思っていたのだが、まさか知らなかったなんて、とってもやばい。
ヘリオスフィアは、隻眼でも文官として問題無いって思ってたに違いない。
でも足は、ちょっと足は移動があれで、ちょっと、うん経験済みなので本当によく分かります。
フレックはここで帰れって言われるかもなあ、とちょっとだけ繋がれた手に力を込めてしまった。
この後冷たく強くぱしっと、振りほどかれる。
その未来の前の最後の甘え。
だけどその覚悟は強く手を握り締められ散った。
「あ、う」
手を取ったまま、ヘリオスフィアがフレックを片手で抱き上げる。
急な密着にフレックは頭が真っ白になり、顔が赤くなるのを止められなかった。
ただ馬車からフレックをおろすだけの作業、だというの美術品を扱うような丁寧さでもって地面に足を付けさせられる。
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