3-2
さしも楽観的なフレックでも、王立学園が大変な事になっているのが理解出来た。
出来た上で、黒の眼ひとつだけ大きく見開く。
「あ、あ、りぉ…ヘリオスフィア・ニューノ様もですか!?」
聖女とヘリオスフィアが結ばれる。
フレックはあの夢を信じていた。
幸せになる未来を、東部魔境戦線から祝福する人生を送ろうと思っていた。
なのに聖女は自称で、とても危うい綱渡りをしているなんて。
それにヘリオスフィアが巻き込まれているなんて。
「ああ、ヘリオスフィア・ニューノ様はコナかけられてるけど無視決め込んで相変わらず、その、元気だし、優秀だよ」
兄のその一言にフレックはホっと胸を撫で下ろした。
そういうよくない女性に引っ掛からないヘリオスフィアの真面目さに、知ってはいたけど改めて安堵した。
「それじゃあ誰か素敵な御令嬢と婚約しているんですね?」
東部魔境戦線からもフレックは念の為と魔石を贈っていた。
それもまた名無しで贈っていたし、問い合わせは来なかったので、せっせと贈り続けた。
そんなものただの保険だ。
聖女が傍に居て、その力で特異体質が治れば無用の長物だ。
夢では聖女には、確かにその力があった。
けれど今の話を聞くに聖女と結ばれるのは現実的ではない。
ヘリオスフィアが逆ハーレムの一員なんて絶対にあり得ない。
だったら、きっと、聖女では無いが特異体質を抑えることが出来る人物が傍に居るのはずだ。
ニューノ家がいや世界がヘリオスフィアを放っておくはずがないのだ。
いずれかの公爵家の御令嬢か。
もしくわ、王家の末姫様か。
フレックは其方を祝福しなければと、表情を明るくさせた。
「…ん、それは、まぁ、うん…えーと」
「ヘリオスフィア・ニューノ様はアンタ以外と婚約してないわよ」
「姉上今なんて?」
言い濁す兄に変わって、長い黒髪が美しい姉がきっぱり告げた。
隣で夫がはわはわしている。
「だから、ヘリオスフィア・ニューノ様はアンタ以外と婚約してないっての」
「…なんで?」
「明日本人に聞けば?」
「姉上今なんて?」
「明日来るのよ。ヘリオスフィア・ニューノ様が、うちに」
まったくもって意味不明なことを言われたフレックは兄を見つめた。
なんとも言えない表情を浮かべた兄が、
「聖女様(仮)の所為で生徒会が人手不足らしくてな?ヘリオスフィア・ニューノ様がお前を文官として雇うからって明日挨拶にいらっしゃる。諦めろ」
「東部還ってい?」
「それは駄目」
家族全員、使用人からもそう言われてしまったフレックは、ソファに崩れ落ちた。
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