第62話
「う~、ねみ~」
新入生合宿は二日目に突入した。僕達はベッドから起き上がり伸びをする。
「お~い、春日部、今日のスケジュールってどうなってるんだっけ?」
「小川、お前昨日も説明されたの聞いてなかったのかよ」
小川君は眠そうな目を擦りながら訪ねてくる。僕は脳内で今日のスケジュール表を思い浮かべる。
「え~と、この後朝食を取ったら、準備してバスで山の麓まで移動してそれから登山って流れだね」
「うげ~」
「いや、小川この登山はチャンスかもしれないぞ」
小川君は何を言ってるんだと言いたげな顔で本庄君を見ているが、当の本人はニヤっと笑う。
「よく考えてみろ。サッカー部で体力があるお前が女子達の面倒を見ながら登山すれば、お前への印象は変わってくるはずだ」
「な、なるほど……」
小川君はフムフムと顎を触って納得している様子だ。この様子なら登山にはやる気で参加してくれそうだ。その後、朝食を取る為に食堂まで移動した。食堂に行くと既にテーブルに料理が並べられている。事前に決まっている自分の席に移動する。といっても同じ班で固まって食事をする為、僕達の席には女性陣が先に座っていた。
「あ、みんな、おはよ~」
入間さんは朝から元気なようで僕達の姿を見つけるとぶんぶんと手を振って挨拶をしてきた。隣には川口さんと越谷さんが座っているが越谷さんはまだ眠いのか目を瞑っている。いや、これ寝てないか?
「え、入間さん、越谷さん寝てるの?」
「あ~、そうそう、聞いてよ。瑠衣ったら全然起きないからここまで引きずって来たんだから」
「いや、起きない越谷さんが悪いと言っても引きずるのは可哀想な気が……」
食堂まで引きずられて来た越谷さんを想像すると悪いけど面白いなと思ってふっと笑った。
「何、アンタ笑ってんのよ」
いつの間にか起きたのか、越谷さんが半分くらい目を開けてこちらを睨んでいる。いや、僕が笑った瞬間に起きるなんて間が悪すぎる。
「いえ、なんでもございません……」
「よし」
「あ、でも越谷さん、髪の毛めっちゃ跳ねてるよ」
越谷さんが髪を整えないで来たのだろう。髪の毛がぴょんぴょん跳ねている。その姿を指摘したら越谷さんは更に怖い顔になった。
「コ〇ス……」
「大変、申し訳ございません」
「春日部君、その言い方はデリカシー無さ過ぎ」
川口さんにまで注意されてしまう。確かに今回は僕が悪いので越谷さんに向かって頭を下げる。越谷さんはフンとそっぽを向いてしまった。
僕は申し訳なくなったのでテーブルの上の料理を見る。ご飯と目玉焼き、ソーセージとお手本のような朝食のメニューだな。そんな事を考えていたら、目の前の越谷さんは携帯の鏡のカメラ機能を使っているのか、携帯を見ながら髪を整えている。僕は女子にデリカシーの無い事を言ってしまった事を反省。
「あれ、これいつから食っていいんだ?」
「さっき、先生が言ってたけど、時間になったら号令をするんだって」
先に来ていた入間さんが教えてくれる。僕はふと食堂の時計を見る。七時半の十分前くらいだから、もうちょっと待つ必要があるみたいだ。
「面倒だな。腹減ったわ」
「まあまあ、そういえば今日の登山ってどれくらい登るんだろ」
「まあ、スケジュール表見たらスタートからゴールまででもそこまで時間ないからそんな大変じゃないとは思うけど」
僕と本庄君がそのような事を話していると、入間さんが急にあっと声をあげた。
「登山も良いけど、今日の夜キャンプファイヤーでしょ?あれ確か、毎年誰かしら告白するらしいじゃん!!」
それを聞いた僕は恥ずかしくなって越谷さんを見ると顔を見られたくないのか明後日の方向を向いていた。
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