第60話
越谷さんと別れた後、夕食の時間になった。どうやらメニューは大好物のハンバーグだ。だが僕は夕食に集中できずに越谷さんから明日キャンプファイヤーの時に伝えたいという事があるという言葉の意味を考えてしまっていた。
「春日部、ぼけっとしてどうしたんだ?」
「い、いえ、大丈夫です!!」
隣に座っている本庄君から心配されて声をかけられて声が上ずって返答してしまった。いかん、動揺しすぎているようだ。僕はごめんごめんと周りの人に謝って本庄君に向き直る。
「いや、全然大丈夫じゃないだろ……」
「あ、え~、後で相談致します……」
「?まあ、分かった」
ご飯を食べ終わった後、僕と本庄君の二人で合宿所のロビーまで来た。丁度二人が座れる椅子があったのでそこに座って話始める。
「で、何があったんだ?」
「え、え~とですね……」
僕は周りの人に声が聞こえない様に小さな声で本庄君に先ほど何があったのかを話した。本庄君はその間、腕を組みながら
「おお、越谷さん勇気出したな……」
話終わった後、本庄君は感嘆していた。本庄君はうんうんと納得している様だ。いや、何が起きているか僕に教えてください。
「で、その内容って何かと思って……」
「は?いくらお前でも文脈で何伝えたいか分かるだろ!?」
まあ、正直これって告白なんじゃないかなとは思った。キャンプファイヤーの噂の後に伝えたい事があるだなんて言われたらつまり、そういう事なんじゃないかと。だから、本庄君に伝えるべきなのかも悩んだが僕だけで答えがないと考えて相談してしまった。
「いや、でも越谷さんが僕の事を好きって事あるのかな?」
「お前、マジ?」
本庄君がビックリしたのか口開きすぎて顎が伸びている。そんなにやると顎外れるよ。
「いや、だって顔カッコよくはないでしょ?」
「まあ、普通だと思うが……」
「それに陰キャで話してても面白くないし……」
「挙動不審しすぎて面白い時あるけどな」
「その面白いって絶対良い意味じゃないじゃん!!」
本庄君はハハ、悪い悪いと謝る。本庄君はニヤニヤしながらも何かを考えているようで少し黙った。僕に何を伝えるべきか考えてくれているのだろう。
「で、お前はどうしたいって思うんだ?」
「どうしたいって?」
「それが本当に告白だった時だよ」
本庄君は真剣な顔で僕の目を見つめている。僕はその真っ直ぐな瞳に耐えられなくて目をそらす。僕は越谷さんの事をどう思っているんだろう。勿論好意はある。だがそれは友達としてなのか恋人になりたいという好意なのか僕には分からない。僕が恋人を作ろうなどと考えなくなったあの時から……。
「まだ、分からないって顔してるな」
しばらく黙っていた僕を見て、本庄君は僕の肩に手を置く。僕は次の言葉が見つからないまま本庄君の手を見ている。
「まあ、明日のキャンプファイヤーまで時間あるんだし悩めばいいんじゃねえの?」
「へ?」
「それか、その時の自分に任せるってのもありだぜ。告白を受けて付き合うのか、それとも保留にするのか、それとも断るのか」
「い、いや、それは越谷さんに失礼じゃない?」
「そうかもな。だけど、恋愛なんて惚れた奴の負けとも言うしな」
本庄君は笑いながら話している。それはふざけてなどではなく僕の事を思って笑ってくれているというのが感じられた。
「それとも、告白は告白でも、お前の息が臭いって言われるかもしれないしな」
「僕の息って臭いの!?」
僕達は笑い合いながらしばらくロビーで語っていた。
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