第45話

 「え~、僕ここに居て良いんですかね……?」


 現在、プリクラ機の中に僕、越谷さん、川口さんの三人で入っているが狭い空間に密集している為、二人に触れない様に必死に縮こまっている。いや、こういう時に女子に触れてしまったらセクハラとか色々な問題があるからね……。


 「アンタ、何言ってんの。女子二人とプリクラなんて男子の夢でしょ」


 「そーそー、何でそんな隅で小っちゃくなってるの?」


 隅で小さくなっている僕を川口さんが腕を引っ張ってプリクラ機の中央に立たせる。


 「え、真ん中?いやいやいや、僕隅に居るので……」


 「ダメ!!」


 「ふふ、ハーレムじゃん。ウケる」


 川口さんには拒否され、越谷さんは僕の様子を見てニヤニヤ笑っている。この辱め、いつか覚えておいて欲しい……。川口さんが慣れた手つきでプリクラの設定をしているみたいだ。やはり女子はこういうところ、結構来るのかな。よくゲーセンには行くけど、プリクラだけは門外漢だからなあ。


 「二人共、もうちょいで設定終わるから待ってて」


 「は~い」


 「ヘイ……」


 テンション高めの二人と打って変わって僕のテンションは地の底である。いや、そもそもプリクラどころか、自分の写真なんて撮らないくらいだし。説明しよう、陰キャは何処かに旅行に行った時ですら、自分の姿を入れずに風景だけの写真を撮りがちなのだ。ハア……。


 「よし、設定終わった。もうちょいで撮影始まるから準備して」


 「合点招致」


 「何なの、その返事」


 僕は心を閉ざし、無心で返答する。するとプリクラから音声が流れる。


 「猫のポーズを取ってね!!」


 「はいい?」


 どうやら、プリクラ機がポーズを指定してくるのでそれに合わせてポージングして撮影するようだ。え、なにその機能。二人を見ると手を招き猫のようにして頭の上に乗せている。え、可愛いな。じゃあ僕が思うようなポーズをとろう。猫の髭に見えるように手をパーにして両頬に付ける。


 「え、なにそのポーズ、キモ……」


 画面に映っている僕のポーズを見て越谷さんがドン引きしている。その瞬間、シャッターが切られた為、キモイ僕とそれを見てドン引きしている越谷さんが画面に映る。ちなみに川口さんはばっちり表情を決めて可愛く映っていた。


 「ちょっと、アンタのせいで変な顔になっちゃったじゃない!!」


 「ええ、僕が思うような猫のポーズにしたのに……」


 「次は小顔のポーズ!!」


 「はやっ」


 再び、二人のポージングを見ると、手で上手く顎のラインを隠している。なるほど、あれが小顔のポーズか。よし、僕が思う小顔のポーズをしよう。両腕を顔の前で合わせて完全に顔が映らない様にした。


 「ねえ、アンタ、何で私達のポーズ見てから意味の分からないポーズにしてんの?」


 「いや、そんな可愛いポーズ取ったら恥ずかしいし……」


 「こういう時は恥を忍んで撮るの!!ていうかアンタの変なポーズの方が恥ずかしいから……」


 え、僕が良いと思ったポーズ取ってるだけなのに……。と紆余曲折ありとうとう最後の撮影までたどり着いたようだ。


 「最後はみんな中央に集まれ~」


 「それってどういうポーズ……?ってえ?」


 困惑していると右腕に川口さんが腕を絡ませている。


 「え、何してるの!?」


 「中央に集まるんだからくっ付かないと」


 「!!じゃあ、私も」


 越谷さんが左腕に腕を絡ませてきて、ぴったりくっ付いている。


 「二人共、近すぎだって!!」


 「いいじゃない。可愛い女の子に寄られて嬉しいでしょ?」


 「文句言ってないで、カメラに集中しな」


 こうして最後の写真を撮り終えた僕は屍のように燃え尽きていた。その間二人はプリクラに色々落書きやら、写真の修整などをしているみたいだ。


 こうして出来上がりの写真を見たら僕が二人に抱えられて運ばれている捕虜みたいなポーズになっていた。

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