第44話

 買い物を終え、食事も済ませた僕達はデパート内のゲームセンターに来ている。そういえば、ゲームセンターに来るの前に川口さんと一緒に行った以来だな。でもそれ越谷さんには言わない方が良いよね。


 「春日部君、この間のリベンジだよ」


 川口さんはこの間やったものと同じレーシングゲームの席に既に座っている。川口さん、それを言ってしまうと……。僕は恐る恐る振り返り後ろの越谷さんを確認する。するとそこには超至近距離で立っている越谷さんの顔があった。


 「うわああああ」


 「いや、ビビりすぎでしょ」


 いや、そんなに近くに顔があったらビックリしちゃうって。そんなに怒ってないようだ。


 「前に聞いてるから知ってる」


 「へ?」


 そうか、前に二人で話した時に聞いたのか。でも知ってた割に越谷さん顔が怒ってる気がするんですけど……。


 「そのゲーム、三人でも出来るんでしょ?私がボコしてあげる」


 「へ?」


 こうして、三人での対戦が始まった。ちなみに何回か戦ったが全部僕が完勝した。そのおかげで越谷さんは更に拗ねてしまった。それが終わった後はゲーセンの中を周る事になつた。


 「あ、このぬいぐるみ可愛い」


 越谷さんが見つけたのは前回、川口さんに取ってあげたぬいぐるみと同じアニメの別キャラだった。僕はクレーンの機種や状態を見て何回か挑戦すれば取れそうだったのを確認する。


 「おし、僕が取ってみるよ」


 「え?」


 越谷さんが困惑してる間に僕は百円玉を入れて挑戦する。何回か挑戦して景品は穴の近くまで持ってきて、最後の百円で穴に景品を落とすことが出来た。


 「凄い。本当ゲーム得意なのね……」


 「ふふ、ぼっちだから一人でゲーセン通いした甲斐があったね」


 「その悲しい情報はいらなかったけど……」


 越谷さんの心無い一言に目がウルウルして涙が零れそうになる。自虐ネタくらい優しく拾ってくれてもいいじゃない!!


 「じゃあ、越谷さん、ハイ」

 

 僕は、手にしたぬいぐるみを越谷さんに手渡す。越谷さんは困惑して受け取ろうとしない。


 「え、なに?」


 「可愛いって言ってたから、欲しいかと思ったけどいらない?」


 「い、いる!!」


 越谷さんは僕から受け取って、ぬいぐるみをギュッと抱きしめた。


 「あ~、春日部君、そういう事、色々な女の子にしてるの?」


 川口さんが茶々を入れて来る。それを聞いて越谷さんは首をかしげる。


 「越谷さん、それとは別のやつだけど同じような……」


 「あ~、あっちに僕が好きなシューティングゲームがあるううううう」


 僕は川口さんの声をかき消すように大声を出して妨害する。越谷さんは何をしているんだと困惑した顔で僕を見つめている。そんな目で見ないでください。泣いてしまう。


 「あっ、あっちにプリクラあるよ。やろやろ」


 越谷さんはプリクラのコーナーへさっさと向かってしまう。僕と川口さんはその場に取り残された。


 「今日、やたら、越谷さん、からかうね」


 「ごめんね。可愛くてつい」


 まあ確かに、普段なクールな越谷さんが慌てている姿が可愛いらしいなと思う。いや、越谷さん可哀そう過ぎるな。心の中で越谷さんに謝る。


 「というより、春日部君と仲良さそうにしているのがむしゃくしゃするからかな」


 「え?」


 僕と越谷さんが仲良さそうにしているのがむしゃくしゃする……。僕がその理由を考えているうちに川口さんもプリクラコーナーへ駆け出してしまった。いや、男一人でプリクラコーナー行けないから置いてかないでくれませんか!?

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