第40話

「私も一緒に買い物行っちゃだめ?」


 川口さんが尋ねる。え、僕と越谷さん、川口さんの三人で一緒に買い物行くって事?僕、男一人になるんだけど、こういう時こそ本庄君に頼ればいいんだ。僕は遠くの席の本庄君によく分かっていないハンドサインをして助けを求める。それに気付いた本庄君はサムズアップで返してきた。いくら、本庄君といえど今度頭叩いていいかな?


 「……ねえ、春日部君ダメ?」


 僕達が中々答えないからだろう。しびれを切らしてもう一度聞かれてしまった。僕はいいけど、越谷さんも仲良いみたいだし大丈夫か。


 「も、勿論大丈夫だよ。ね、越谷さん?」


 「……ソーダネ」


 何か越谷さんの反応が薄い気がする。それとフクロウみたいな目で僕を見ないでください。滅茶苦茶怖いです……。まあ、後で本庄君を誘えばいいか。


 昼を食べ終えた後、一人で本庄君の元に行き、今度の休日に買い物へ行かないか尋ねてみると予想しない返答が返ってきた。


 「……それ、あの二人に言ったのか?」


 「ううん、本庄君が来るって言ったら報告しようかと」


 「あ~、なら止めとくわ」


 「あっ、ごめん、用事あった?」


 「いや、そういう訳じゃないんだが……、まあ、三人で行けって。な?」


 「う、うん。分かった」


 本庄君があそこまで言うんだ。今度の休みは三人で買い物に行く事にしよう。ふと後ろを見ると越谷さんと川口さんが楽しそうに話している。いや、あの空間僕がいたら邪魔なんじゃないか?僕は二人に近付いて話しかける。


 「ねえ、さっきの買い物の話だけどさ。僕と行くより女子二人で行った方が楽しいんじゃない?」


 「は?」


 「アンタ、バカ?」


 二人から睨まれてしまった。特に越谷さんは興奮しすぎて某ツンデレキャラみたいになっている。何でこんなに怒られているんだ……。


 「すいません……、今のは無かった事にしていただいて……」


 「当然でしょ。アンタの服がダサいから買いに行くのが発端なんだから」


 「へい……」


 そして次の土曜日、三人で駅前に買い物へ行く事となる。まさか学園の中で人気のある二人と一緒に買い物に行く事になるとは思わなかったので今からどうしようと悩むことになった。


 

 時は早いものであまり悩む暇もなく土曜日になってしまった。僕は唯一まともな服を着て行く。男子は三十分に来るべしとラブコメ漫画に描いてあった気がするので集合時間の三十分前に駅前の時計台の下に着いた。流石にこんなに早く来る人はいないだろうとイヤホンを耳に着けて音楽を聴きながら待とうとする。耳に着けた瞬間、肩をぽんぽんと叩かれる。慌てて後ろを振り向くと越谷さんが立っていた。黒い帽子に白いシャツ、ジーンズとカッコいい格好をしている。


 「おはよ」


 「こ、越谷さん、おはよう」


 「春日部、来るの早いね。まだ三十分前じゃん」


 「越谷さんこそ早くない?」


 こんなに早く来るの僕くらいだろうと高を括っていたので慌ててイヤホンをポケットにしまう。


 「た、たまたま早く起きちゃったの」


 「そうなんだ。僕もたまたま早く来ちゃって」


 本当は狙って三十分前に来たっていうと何か格好悪い感じがするので黙っている。それから十五分程、二人で話していると川口さんがこちらへ小走りで近寄って来るのが見えた。


 「ごめんなさい。待たせちゃって」


 「全然待ってないから大丈夫だよ」


 「さっき来たところだから」


 越谷さんと話を合わせて待ってないと伝える。三人集まったので買い物に向かう。その瞬間、川口さんから耳打ちされる。


 「越谷さんと二人で楽しかった?」

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