第37話

その後、一年AクラスとBクラスが合同で新入生合宿の話し合いを行うため、二クラスが講堂に集められた。ここで合宿の説明や半決めなどを行うらしい。壇上には僕達の担任の上尾先生が上がる。どうやらこの合宿の責任者のようだ。


 「え~、それでは新入生合宿のスケジュールを説明します」


 前の方から合宿のしおりといったホチキスで留められたプリントが回される。その後、上尾先生の説明と共にしおりを読み進めていく。どうやら一日目に集団訓練、飯盒炊飯などを行い、二日目に山登りが行われるらしい。それ以外にもレクリエーションなどあるらしく学校行事としてはかなりハードな内容に思える。説明を受けている他の生徒もうかない表情をしている。だが、高校生になって初めての宿泊イベントだ。皆心の中では楽しみだという顔をにじませている。そして、それはそれは長い上尾先生の話が終わりを迎えそうになった時、出来事は起きた。


 「ではこれから班を作ってもらうが、決まりがある」


 ガヤガヤしていた生徒達が一斉に黙る。班を作る事は知っていたが、そのルールの内容が気になるためだ。


 「まず、班は6人以上で作ってもらう。そこで班は男女各三名以上で必ずAクラスの生徒とBクラスの生徒が混じるようにするように」


 そのルールを聞いて、生徒達がガヤガヤと騒ぎ始める。男女混合でABの生徒同士で作らなきゃいけない!?何でそんな面倒なルールになっているんだ。


 「その趣旨だが、同じクラスの人間だけでなく別のクラスの生徒と交流を図るというものがある。あと例えばだが二日目の山登りで男女が一緒に行動するとき、男女の体力差を上手くカバーして協力して登る事に意義があるからだ」


 なるほど、話を聞いているとそれなりに意味があって、この決まりが作られているような気がする。特に僕の様な友達が少ない人は他クラスに友達などいない事が多いだろうし、男女協力して行う事に意義があるというのも一理あるような気がしてくる。その後、生徒達で班決めする時間になった。


 「おーい、春日部」


 本庄君が僕の名前を呼ぶ。来てくれたんだ、僕の救世主ヒーロー


 「本庄君!!同じ班に……」


 「ハハッ、分かってるって。てか男女混合の両クラスってことは……」


 「いえ~い、参上!!」


 「まあ、アンタ達しか友達いないし……」


 越谷さんと入間さんが集まってくる。やった、いつものメンツが揃ってきた。このメンツなら僕が気後れする事もなさそうだし良かった。僕ら四人が集まってる所にすっと後ろから陰が見えた。


 「本庄~、俺もいいか~?」


 「小川、お前他の班に入らなくていいのか?」


 「あ~、それでもいいんだけど、お前と一緒の方が楽しそうだし」


 本庄君といつも仲良さそうにしている小川君も来た。あと最低でもあと一人必要なんだ。男女三人以上ということは後、女生徒が一人必要という事だ。誰が入るんだろうと僕がぼけっと考えていた時だ。辺りがざわっとした。その声がする方を見ると川口さんが誘いを断っているのか頭を下げている所を見てしまった。僕がジッと見ていると川口さんとふと目が合った。


 「あっ、春日部君!!」


 川口さんは僕目がけて小走りで近寄って来る。どうしたんだろう。


 「ねえ、春日部君の班って人足りてる?」


 「いや、あと女子一人足りないって感じだね」


 「そうしたらさ……」


 川口さんは一回深呼吸をしてまた口を開いた。


 「私も同じ班に入れてくれない?」

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