第33話

 「か、春日部君、こんにちは……」


 そこにいたのは川口さんだった。僕と越谷さんが一緒に買い物に来ているからか困惑しているのだろうか。まあ僕の隣に見た目ギャルの越谷さんがいたらビビるよね。


 「こ、こんにちは、えーと……」


 「と、隣の女の子って彼女さん?」


 僕が何か言おうとした時に、川口さんに遮られる。川口さんを見ると何処か焦ったような様子を伺わせた。


 「そ、そんなわけ……」


 「そうだとしたら、どうしたって言うの?」


 またしても僕の言葉は遮られた。ただ、今度は隣の越谷さんから衝撃的な言葉が発せられた。え、僕ら付き合っていないよね?


 「あ、あなたじゃなく、私は春日部君に聞いているんです」


 「二人共、落ち着いて!!ね?」


 何故かヒートアップしてきた二人を落ち着ける為に僕が間に入る。何で二人共興奮しているんだ。


 「フッーフッー」


 「……」


 川口さんはかなりの興奮状態で、それとは対照的に越谷さんは薄目で川口さんを見ている。


 「と、とりあえず、場所変えません?」


 本屋の前で騒いでいるからか周りの客から視線の的になっている。流石にこのままはよくない。本屋の店員もこちらを睨んでいるので、僕は二人を落ち着けて場所を変える。仕方がないので先ほどのハンバーガーショップに戻ってきた。


 「あのー、持ってきました」


 取り合えず僕が三人分の飲み物を買ってきて、向かい合って座っている越谷さんと川口さんに飲み物を渡す。というか向かい合って座られると僕どっちかの隣座るしかなくなるんですけど。僕が座るところを悩んでいると越谷さんが僕を睨んでいる。目で隣に座れと訴えかけているような気がする。その指示に従い、越谷さんの隣に座る。


 「……何で、その子の隣に座るの?」


 その様子を見た川口さんから質問される。


 「え、なんでって」


 「春日部と友達だもん。隣座っても別におかしくないでしょ」


 いつものコミュ障気味の越谷さんの面影もないくらいの堂々とした態度に驚く。越谷さんあなた、いつもそんなキャラじゃないでしょ。


 「川口さんに前言ったと思うけど隣の席で友達になったんだ」


 「じゃあ、その子と一緒に水族館に……」


 川口さんがブツブツ何か言ってるがこちら二人には全く聞こえない。


 「それであなたって誰なんですか?」


 先ほどからやたら高圧的な越谷さんが尋ねる。マジで何で今日の越谷さんこんなに怖いんだ。


 「私は川口亜紀……、春日部君とは同じ図書委員です」


 「あ~、学園のマドンナとか言われてる……」


 越谷さんも川口さんの噂は聞いたことがあったのかどこか納得した様子だ。


 「で、お二人って実際付き合ってるんですか?」


 川口さんも落ち着いてきたのか冷静に訪ねてきた。


 「い、いや、僕達は付き合ってないよ」


 僕がすぐに事実を述べる。さっきから越谷さん様子がおかしいから変な事を言う前に答えた方が良いと思ったからだ。


 「そうなんだ。でもほぼ付き合ってるようなもんだよね?」


 川口さんに言われて首をかしげながら越谷さんを見る。越谷さんは川口さんを見つめて目を離さない。すごい集中力だ。


 「いや、僕達は本当に友達だよ」


 「で、でも一緒にデートしてたじゃない」


 そう言われてもと……と悩んでいたが僕は何と答えれば良いのか分からない。


 「春日部さ……」


 ずっと黙っていた越谷さんが口を開ける。


 「ちょっと……、私と川口さんの二人にしてくれない?」

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