第32話

 ジッー、横から視線を感じる。まあ例のごとく、越谷さんである。何故か凝視されている。授業に集中できないです……。授業中の為、彼女に何か言う訳にもいかず、授業終了までそのまま過ごした。


 「あの、越谷さん、どうしたの?」


 授業終了後の休み時間になった瞬間、越谷さんに尋ねる。流石にこれがずっと続くと気になって仕方がない。


 「別に……」


 だが僕の疑問に快く答える気がないようで、ぷいと反対側を向いてしまった。何でか拗ねてしまっているな。まあ予測はつく。テスト開けに一緒に出掛ける事が出来なかった件についてだろう。


 「こ、越谷さんが良ければなんだけど」


 「……、うん」


 僕が何か言おうと察したのか。こちらに向いて黙って聞いている。


 「中間テストお疲れ様会でもいこ…」


 「行く」


 最後まで伝える前に、僕が言いたい事が分かっただろう。越谷さんが行くと意思表示した。そう言う越谷さんの顔を見ると顔が赤くなっている。


 「よ、よし、あと本庄君や入間さん誘う?」


 「え?」


 あ、あれ?僕、変な事言ったのかな。本庄君と入間さん達と一緒にテスト勉強頑張ってきたんだし当然誘う事になると思ったんだけど。


 「え、え~と、本庄と遥香とも行きたいんだけど、また今度というか……」


 「う、うん?」


 どういうことだろう。本庄君と入間さんとはまた今度遊びたいという事なのか。


 「今日はふ、二人で遊びに行くよ!!」


 「は、はい」


 僕から誘ったけど、何故か僕が押し込まれてる気がする。まあ、いつもの事だから仕方ないか……。こうして放課後、二人だけの中間テストお疲れ様会が開催される事になった。放課後、僕達は並んで教室を出る。


 「それで何処行くかは全く考えてないなんだよね……」


 「まあ、歩きながら考えればいいんじゃない」


 取り合えず、学校へ出てから考えるしかないか。僕は越谷さんとの話をしているのに夢中で周りが全く見えていなかった。


 「越谷君……?」


 僕達は学校近くの駅周りで休憩出来る所を探す。またこないだのように喫茶店でもいいのだが毎回喫茶店へ行くと学生のお小遣いでは厳しいものがあるため安いハンバーガーショップにすることになった。


 「ここなら僕でも安心だよ」


 「まあ、コーヒー高いしね」


 僕達は飲み物ハンバーガーとポテトを頼んで席に座った。


 「越谷さん特に行きたい所、無ければ僕探してみるけど」


 「う~ん、私、春日部の行きたい所に行きたい」


 え、僕の行きたい所?それじゃ越谷さんの行きたい所じゃないから楽しめないと思うんだけど良いのかな。


 「前、私と行きたい所考えてくれたじゃん。だから春日部が行きたい所教えてよ」


 「そ、そうしたら本屋行きたいんだけど、越谷さん楽しめるか分からないよ」


 「いや、私だって本屋くらい行くし、頭悪いからってバカにしすぎじゃない!?」


 や、やば、バカにしたつもりなかったのに変な所で気を使い過ぎてこんな事になってしまった。僕は慌てて何と弁明するかあわあわしてしまう。


 「ぷっ、ごめん。冗談冗談。これ食べてちょっと休憩したら行こ」


 「うん」


 僕達はそうやって本屋に行くことにした。駅前の本屋はかなり大きく様々なジャンルの本が置いてある。


 「越谷さんってどんな本読むの?」


 「う~ん、まあ、漫画とかファッション雑誌とかはよく買うよ」


 今時の女子らしいチョイスだなと感じる。まあ、今時小説を買って読むっていう人の方が珍しいのかもしれない。


 「春日部は小説とかだよね。あっちにあるみたいだから行ってみる?」


 「そうだね。じゃあ、行こうか」


 こうして僕達は本屋の奥の方に行こうとした時である。後ろから気配を感じた。


 「あれ……、春日部君?」


 声がする方を見るとそこにいたのは川口さんだった。

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