第26話

 「どうも~、入間遥香です!!よろしくね」


 放課後、三人で入間さんを迎えに行こうと隣のクラスまで行った時のファーストコンタクトの挨拶で満面の笑みの入間さんが現れた。あまりの陽キャオーラに越谷さんが下を向いている。ホントこの人、見た目の割に陽キャ苦手だよね。


 入間さんの印象はというと長い髪をポニーテールでまとめて、活発そうな女の子だ。どうやら本庄君と幼馴染のようで偶然にも同じ高校へ選んだのだという。一緒に勉強会をするくらいだし仲がいいみたいだが付き合っているのだろうか?


 「ど、どうもよろしくお願いします……」


 「ああ、君が春日部君ね。晃からよく話聞いてるよ」


 晃?ああ、本庄君の下の名前か。いや、それにしても二人の会話に僕が出てくるってどういうことなんですか?


 「……、越谷瑠衣」


 越谷さんは緊張しているのか、入間さんの陽キャオーラにあてられているのか。自己紹介で自分の名前だけ答えた。それはいくらなんでも不愛想すぎませんかね。


 「きゃ~、貴女が噂の越谷さんね。カワイイ~」


 入間さんは越谷さんの周りをグルグル回って様子を眺めている。その間、越谷さんは心が死んだのか目を閉じて菩薩のような顔をしている。そんなところで意識を飛ばさないでください。


 「遥香、そのあたりでよしてやれ」


 様子を見かねて本庄君が入間さんを止めた。良かった、そろそろ本当に越谷さんの魂が抜ける所だった。


 「今日は勉強会よろしくね。私頭あんまり良くないから迷惑かけるかもだけど」


 「ああ、それなら大丈夫だ。何せここにいる春日部は入試を主席合格した秀才だ」


 本庄君が自信満々に僕を紹介する。いや、無駄にハードルを上げないでいただけると助かります。


 「へ~、凄い、そういえば入学式の新入生代表の挨拶してたね」


 「ま、まあそうですね」


 そうなのだ。無駄に主席で合格したがために新入生代表の挨拶を頼まれたのだ。陰キャの僕として一度断ったのだがちょっと強引に押し付けられた形で止む無く引き受けたのだった。


 「じゃあ、春日部君に教われば万事大丈夫って訳だね!!」


 「まあ、それだと春日部が自分の勉強出来ないからあんまり迷惑かけないようにな」


 「まあ、授業の内容なら授業中で大体覚えてるし、家でも復習するからそんな気を使わないで大丈夫だよ」


 僕がそう言うと、本庄君と入間さんはポカーンとして越谷さんは人を殺すかのような目つきで僕を睨んでいる。


 「……キサマオボエテオケ」


 どこからか呪詛のような言葉が聞こえてくるのは気のせいだろうか。取り合えず特級呪霊はほっておいて僕達はファミレスまで移動する事にした。


 ファミレスは学校から10分くらい歩いた所にあった。夕方ということもありそれほど客席は空いているようだ。よく見ると同じ制服の生徒達が何組か来ている様だ。僕達と同じく勉強の為に来ているのだろう。


 「四名様ですね。ではお好きな席にどうぞ」


 ウェイトレスに促され、僕たちは窓際のテーブル四人席に座ることにした。僕はみんなが座った後空いた所に座ろうと待っているとまず本庄君が奥に行ってその隣に入間さんが座った。あれ、それだと僕と越谷さんが並んで座ることになりません?本庄君の向かいに越谷さんが座った。


 「春日部君、早く座ったら?」

 

 入間さんが僕に座るように促す。僕はパッと越谷さんを見るとこちらを手招きしている。僕は観念して越谷さんの隣に座った。

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