第25話
あの図書委員の騒動から数日経った頃、恐れていたことが起きた。
「そういえば来週から中間テストが始まるからしっかり勉強しておけよ」
終礼時に担任の上尾先生から放たれた一言は、僕ではなく隣の越谷さんへ強い衝撃を与えた。
「ちゅ、ちゅうかんてすと」
越谷さんがまるで幼児退行したかのような程、弱々しい独り言に僕はクスッと笑ってしまう。それがいけなかった。越谷さんが僕に思い切りガンを飛ばしてきた。だから越谷さんの見た目でそれをやると滅茶苦茶怖いんだって。
「へえ、春日部は随分余裕そうですなあ……。流石、主席合格様……」
何故かエセ関西弁で嫌味を飛ばしてくる。ええ、勉強してないのは自分のせいではと疑問に思ったがこれを言ったら、しばかれそうなので止めておく。危険予知ヨシ!!
「ていうか、春日部、結構前に勉強教えてくれるって約束したのに全く教えてくれないじゃん!」
確かに以前そのような約束はしたが、その後、勉強を教えて欲しいと言われていないのだからそんな事言われても……と心の中で思う。思うだけで怖いから口には出さない。
「……、春日部、思ってる事があるならハッキリ言った方が良いよ」
「えっ」
「春日部、優しいから我慢してるんだろうけど友達だったらハッキリ言った方が良い事もあるよ」
「越谷さん……」
僕はその言葉にとても感動した。そうだ、友達だったらハッキリ言った方が良い事もあるんだ。
「越谷さん……、普段から勉強しないのが悪い」
「ああああああ、正論だけど凄いムカツクうううううう」
ハッキリ言った方が良いと言った越谷さんは次の瞬間には獣のような唸り声をしていた。僕は本当の事を言ったのに……と悩みながら横の席の獣を眺めていた。
「という事で春日部、勉強を教えてください」
「まあ、そうなりますよね……」
「これから勉強会お願いします!!」
越谷さんは頭を下げてくるので辞めさせる。この話になった時から予想はついていたので驚かないが、さてどうしたのものかと悩む。
「お~い、春日部、お前ら勉強会するの?」
悩んでいると前の席から本庄君が声をかけてきた。僕達が勉強会をすると聞いて声をかけてきたみたいだ。
「まあそうだね。これからどうしようかと思って」
「悪いんだけどその勉強会、俺達も参加していいか?」
「え、僕はいいけど……」
僕は越谷さんの方を見ると溜息をついている。本庄君の事を前、少し苦手と言っていたので不安に思った。
「春日部が良いなら私も良いよ。だけどさっき俺達って言ってたけど何人来るの?」
「ああ、俺ともう一人だけお願いしたい」
「それって誰?」
「1-Bの
「知らない」
「僕が他のクラスの人知ってるわけなくない?」
なるほど、他のクラスの女子が来るのか、でもその子に話をせずに進めてもいいものなのか。
「まあ、初対面の人だから不安ではあるけど」
「ああ、それなら平気だろ。俺なんかよりよっぽどコミュ力あるから仲良くなれると思うぜ」
「本庄君よりコミュ力高かったら、それもう妖怪では?」
そんな訳ないだろと小声でツッコミを入れられた。さて四人か何処で勉強する気なのだろうか。
「で、場所だけどちょっと歩くけどファミレスで良いか。学校の近くの喫茶店とか図書室とかは人多そうだしな」
という訳で、僕、越谷さん、本庄君、そして隣のクラスの入間さんとで勉強会が行われる事が決定した。
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