第27話

 「それでは春日部君主催の勉強会を始めます」


 僕達はドリンクバーとポテトを注文した後、入間さんの号令が始まった。別に良いんだけど何で僕が主催になってるんですかね。


 「勉強会って言っても何からやればいいんだ?」


 本庄君が疑問に思ったのか僕に聞いてくる。


 「う~ん、まずは皆が苦手だと思っている科目を言ってもらった方がいいかも」


 「俺が苦手なのが数学と化学、国語は得意だから自分でやるつもりだ」


 「私は国語と英語がダメ……」


 「……、全部……」


 こ、越谷さん苦手科目全部ってどういう事。あなた推薦で入ったんだよねと思ったが、顔が本当に死んでいるので何も言えない。まあ仕方ない。みんなの苦手科目を考えて脳内でシミュレーションをする。


 「き、基本的に越谷さんは僕が見ます。本庄君が得意な国語は入間さんに教えてあげて欲しい。で本庄君の科学に関しては僕のノート見て写して。テストに出るであろう所は全部赤線入れてるから。数学は分からない事があれば僕に聞いて。入間さんの英語だけど難しいな。英単語が分からないなら英単語の暗記から入って欲しい」


 僕は脳内で順序を決めて皆に伝える。その様子を見て三人はポカーンとしている。


 「か、春日部、事前に考えてた訳じゃないんだよな?」


 「?、今初めてみんなの苦手科目聞いたから、今考えたよ」


 「すご~」


 入間さんがかなり驚いている様子だ。僕また何か変な事言ったのだろうか。


 「春日部のこういうところ腹立つ……」


 で何故か越谷さんは隅で拗ねている。


 「越谷さん、何処が分からないのかを知りたいので僕がノートの切れ端を使って簡単にテストを作るからその間、まずは入間さんと一緒に学校指定の英単語帳覚えてね」


 「うえ……」


 「越谷さん一緒に頑張ろうね!!」


 こうして、約三時間ファミレスでの勉強会が行われた。この間、入間さんと越谷さんが一緒に英単語の勉強をした事によってかなり距離が縮まった感じがする。うんうん、良かった良かった。ちなみにミニテストの結果、越谷さんは報告通り全教科教える事になった。


 「越谷さん、これは結構やらないとまずいかも」


 先ほどまで、ニコニコ笑顔でポテトを食べていた越谷さんは手に持っていたポテトがテーブルに落ちた。ショックすぎて放心している。


 「越谷さん、そんなにまずいの?」


 入間さんが心配そうに僕を見つめる。うっ、僕にそんな顔しないで欲しい。


 「ま、まあ、つきっきりでやればどうにかなる……はず……」


 「そこで不安にならないで!!」


 「ま、まあ、越谷さんもあんまり詰め込み過ぎるとパンクするだろ。もう遅いしそろそろ」


 「ソウダーソウダー」


 「そうだ、テスト無事に終わったらこのメンツでダブルデートしようよ!!」


 入間さんが急にとんでもない事を言い出した。ダブルデートって何!?


 「いや、俺達別に付き合ってないだろ……」


 「僕と越谷さんも別に付き合ってないから!!」


 男子陣が否定をすると、何故か越谷さんと入間さんが白い目でこちらを睨んでいる。え、何でこの二人怒ってるんだろう。


 「……遥香もそういう感じなんだ」


 「そういう、瑠衣こそあの距離感でこんな感じなの?」


 越谷さんと入間さんがいつの間にか下の名前で呼ぶほど仲良くなってるなと思う。陽キャの入間さんと越谷さん合うか心配だったけど何より何より。


 「もう、どうでもいいから!!テスト終わったらこの四人で遊びます!!決定!!」


 入間さんの号令後、みんな解散して各自帰る事になった。

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