第17話

 その後授業が終わり、放課後になった。この後、越谷さんと一緒に出掛けるのか~とぼんやり考えていると隣からガタっと立ち上がる音がした。


 「じゃ、じゃあ、春日部行こうよ……」


 越谷さんから話かけられた。僕は顔を上げて越谷さんの顔を見ると心なしか顔が赤いような気がする。どうしたんだろう。熱でもあるんじゃないだろうか。


 「越谷さん、顔が赤いような気がするけど体調大丈夫?熱があるんじゃ?」


 「だ、大丈夫だから、早く行こうよ!!」


 彼女はそう言うと僕の腕を掴んで外に出ようとする。思いっきり引っ張られるため、僕は慌てて自分の鞄を引っ張る。僕は引きずられるように連行される姿を見てクラスメイトがニヤニヤしている。おいおい、見世物じゃないぞ。


 「こ、越谷さんそろそろ……」


 下駄箱の辺りまで引きずられた辺りで彼女に声をかける。僕の声に我に返ったのか、ぱっと僕を掴んでいたのを離してくれた。袖を捲ってみたらちょっと赤くなっている。


 「ご、ごめん、春日部」


 「全然大丈夫だよ……」


 「強く掴んじゃったから赤くなってるじゃない……」


 「まあ、このくらい本当に大丈夫だよ」


 慣れているから、多少の痣くらい本当になんでもない。それより越谷さんが落ち込んでしまっている。そんな顔は見たくない。


 「買い物行くんでしょ?早くしないと暗くなっちゃうよ」


 「うん……」


 僕は彼女の腕を掴んで軽く引っ張る。慣れていない事をしているからか自分が照れているのが分かる。


 「ほら、早く行こうよ」


 「……うん!!」


 彼女も持ち直したのか二人で並んで歩きだした。僕は歩き出したのを確認して彼女の腕を離した。すると越谷さんは僕の手を握ってきた。これは俗に言う手をつないでいるってこということでは!?


 「え、え、越谷さん?」


 「さっき、私を元気づけようとしてくれてやってくれたんでしょ?だったらこれくらい許してよ」


 いや、元気づけようと腕を掴んでみせたのは確かなんだけど手つなぎまでするなんて予想外過ぎて魂が口から出ていきそうになってしまった。


 「わ、私だって恥ずかしいんだから……、そんなに嫌だった?」

 

 「め、滅相もございません」


 彼女は何時もは結構引っ込み思案な所があると思ったが、こういう突拍子の無い事をすることがあるため心臓に悪い。先ほどから心臓がバクバクいっている。越谷さんを見ても照れているのが分かる。いや、何で照れるのにこんな事しちゃうの!?


 「……あんた、折角手をつないでいるのにアホ面しているわけ?」


 「ひょ!?そんな顔していないですが!?」


 「アンタ、よく分からないって時にアホ面をする癖があるみたいね」


 「ええ……、何なのその癖」


 「いや、アンタの事でしょ」


 僕らはバカみたいな話をしながら並んで歩く。その間もずっと手は繋がれたままだった。




 流石に人通りが多くなってきた商店街の所まで出た時には手を離して並んで歩いた。流石に人が多い所では恥ずかしいからね。仕方ないね。


 「じゃあ、服とかアクセサリーとか見に行きたいんだっけ?」


 「いや、春日部が行きたい所行こうよ」


 おや?何か話が違う気がするな。彼女が買い物行きたいからって二人で来たんじゃなかったでしたっけ?でも僕が行きたい所なんて本屋かアニメショップくらいだよな。それか見たいアニメ映画があるから映画館もありだけど越谷さんが見たいかなんて分からないし……。


 「……行きたい所ないって感じ?」


 「い、いやあ、女子が何処行きたいかなんて本当に分からないんだよ……」


 「私の事なんて気にしなくていいのに……、あっ、じゃあ取り合えず喫茶店にでも行く?」


 「ああ、いいね。ここまで歩いてきたし」


 ということで喫茶店で何処に行くか作戦会議をすることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る