第16話
本庄君と話した後、自分の席に戻って来た途端、越谷さんがこちらをジっーと見て来る。
「本庄と何話してたの?」
「え、ええと……」
流石に越谷さんが今日様子がおかしいという話を本人に伝えるわけにはいかない。何と答えようか悩みながら越谷さんの顔を見ると少し不安そうになっている。これはまずい。気が利いた答えをしなければ。あ、そうだ。こういう時女子は褒められるといいとラブコメ漫画に描いてあった気がする。
「こ、越谷さん可愛いよねって話になりましてえ!!」
「えっ!!」
イカン、女子相手に可愛いっていうのが恥ずかしすぎてちょっと声が大きくなってしまった。クラスの人達がこちらを見ている気がする。
「そ、そうなの……?」
越谷さんが顔を真っ赤にさせながら俯いてしまった。しかし、どうやら機嫌が悪いというわけではなさそうだ。よし、ここから畳みかけるぞ。
「ええ!!よっ、東南学園イチの美少女!!大統領!!」
褒め方が良く分からず、褒め散らかす。すると越谷さんがこちらをギロっと睨んできた。
「あんた……、ふざけてるの?」
「大変申し訳ございません……」
やはり適当に褒めるのは逆効果だったようでまた機嫌が悪くなってしまった。コミュ障の僕がこういう時どうすればいいのかなんて分からないよ……。
「はあ……、で本当は何の話してたの?」
「ええとですね……」
これは堪忍するしかないようだ。僕は本当の事を話す事を決めた。
「まあ、僕ってこの通り、コミュニケーションが下手じゃないですか」
「急に何よ……、春日部のは下手って言うかまた別のものだと思うけどね……」
えっ、別のものって何?と問いかけたくなったが話が進まないのでぐっと飲みこみ話を続ける。
「越谷さんが……」
「やっぱり私の話してたんだ。何?悪口?」
「ち、違うよ!!今日何か機嫌が良くないっていうか。僕に対して思うところがあるのかなって本庄君に相談してたんだ」
「はあ、なるほどね……」
僕はとうとう吐露してしまった。これはまた彼女を怒らせてしまっただろうか。やはり僕に人とコミュニケーションを取るなんて無理なのだ。
「別に春日部に怒ってるわけでもないし、春日部は何も悪くないよ……」
「へっ」
越谷さんによると僕が何かをしてしまったという訳でもなく、自分が悪いのだと言う。たまたま機嫌が悪い日に絡まれてしまったということだろうか?
「だって、あんたが女子と一緒に出掛けたとか言うから……」
「?」
僕が女子と一緒に出掛けてしまったのが悪いという事だろうか。ああ、なるほど、お前のような陰キャが女子と出掛けるなど生意気ということなのかな?
「あんた、今絶対分かってなさそうな顔してる」
僕が考えている事が分かるのか呆れ顔でこちらを見ている。ええ、ホントに何だか訳分からない……。
「まあ、でも春日部にイライラをぶつけてたのはごめんね」
「え、いや、全然大丈夫だよ」
越谷さんが俯いて暗い顔をしてしまった。なぜだろう、僕は彼女が落ち込んでいる姿を見たくないと思った。だが次の瞬間、パッと顔を上げてこちらを見て笑った。
「よし、決めた!!今日一緒に出掛ける時、春日部が好きなもの何か奢るよ」
「え、いいよ。悪いし」
「いいの!!私の謝罪の気持ちだから!!」
「わ、分かった」
何故か、僕が何か奢られる事になってしまった。まあ、こういうの友達ぽくていいなと思った。
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