第15話
今日一日、朝に越谷さんとしたやり取りを境に様子がおかしい。授業中、視線を感じると思って越谷さんがこちらをチラチラと見ている。僕が変な事を言ってしまったのだろうか。人とコミュニケーションを取る経験が少なかったせいでイマイチ分からない。
「はあ」
「どうしたん」
休み時間、本庄君が僕の席までやって来てどうしたと心配してくれた。
「いや、ここではちょっと」
「お、おう」
僕は立ち上がり本庄君をクラスの外に連れ出して話し始めた。
「いや、今日越谷さんの様子がおかしいんだ」
「ほう」
僕は今日越谷さんと話した内容などを隠す事なく話した。朝出会って放課後一緒に買い物へ行くことになったこと。休日に女子と出掛けた話をしたら様子がおかしくなった話など余す事なく伝えた。僕が話を進めるほど本庄君の顔がどんどん冷たい表情になっていった気がした。
「なあ」
「うん?」
「お前らの惚気話何時まで聞いてればいいの?」
「の、惚気話じゃないんだけど!?」
「いや、どう考えても惚気話だろ。放課後デート行く約束して、お前が他の女子と出掛けたら越谷さんが拗ねてるんだろ?どう考えても惚気話じゃん」
「いやいや、どうしてそうなるの?僕達デートってわけじゃないから!!」
「いや、放課後男女で一緒に買い物行くってデートじゃなければなんなの?」
何なのと言われても僕と越谷さんはそんな関係ではない。越谷さんが僕なんかとデートなんてするわけじゃないか。
「はあ、今まで黙ってきたけどさ。お前らクラスの連中から完全に付き合ってると思われてるぞ」
「はあ、そんな訳ないよ……」
まあ、薄々ではあるがそのような誤解を受けているんじゃないかとの懸念はあった。他のクラスメイトはたまにこちらを見てニヤニヤしているのを知っていたからだ。越谷さんがそれに気付いているかは分からないので黙っていた。
「まあ、お前らがまだ付き合っていないってのはいいんだが、お前は越谷さんの事どう思ってるんだ?」
「?」
僕がどう思っているかを聞いて何になるんだろう。本気で聞いてきた意味を考えて悩んでしまい次の言葉が出なかった。
「……、まあ、それは俺からいう事じゃねえか。まあ、でもお前らお似合いだと思うけどな」
「そんな訳ないよ……」
僕は中学の頃の事を思い出して俯く。中学での僕のこの最悪な思い出は誰にも言うつもりはない。だからこそ誰も知る人のいないこの学校は来たのだから。
「……お前も何か色々あるみたいだな。突っ込みすぎて悪かったな」
「いや、全然、大丈夫だよ」
「ただ、越谷さんは少なくともお前の事を悪く思ってないってのは分かってるんだろ?」
「さ、流石に友達……、みたいなものだとは思ってるよ」
流石にこれで越谷さんから好かれていないなんて事があったら本当に僕は立ち直れなくなってしまう。
「はあ、お前に何かあったかなんて知らないけどさ。越谷さんの事は信頼してやれよ」
「……うん。分かってる」
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