第18話

 越谷さんと喫茶店に入ったがレジの前は何人か並んでおり、最後尾で待っている。そういえば一人で喫茶店など入った事がないので何を注文すればいいのか全く分からない。まあ普通にホットコーヒーって言っておけば問題ないだろう。


 「そういえば春日部って何か食べる?」


 「へっ!?」


 彼女に促されてレジの横を見るとお菓子やケーキなどが並んでいる。よく見るとお菓子も何かお洒落な感じがするような気がする。


 「う~ん、よく分からないし僕はいいよ……」


 「あんまり、お腹減って無い感じ?だったらフィナンシェなんかどう?」


 フィナンシェって何だ!?マスクの人が乗ってる赤い機体か何かか?越谷さんの指した指の方を見るとマドレーヌのような形をしたお菓子だった。なるほど、確かに美味しそうだ。


 「美味しそうだね」


 「おっ、じゃあ二人で食べようよ」


 よし、何の食べ物か最初全く分からなかったが無事にやり過ごせたみたいだな。良かった。そんな事を考えていると列もはけてきて自分達の順番となった。


 「いらっしゃいませ~」


 「えと、ホットコーヒー二つ……、あっ、春日部サイズは?」


 「え~と、Sさい……」


 そう言いながらメニュー表を見ると、コーヒーの下にショート、トール、グランデなど書いてあった。うん、何語だこれ?え、サイズって普通、SMLの3サイズじゃないのか?いや落ち着け、トール、グランデは分からんがショートは恐らくそのままの意味で間違いない。


 「ショ、ショートで……」


 「おっけ~」


 越谷さんはそういうと手際よくコーヒーとフィナンシェを注文した。僕は財布を取り出しバリバリッとマジックテープを開く。その様子を見た越谷さんは呆れた顔をしている。


 「えっ、越谷さん呆れた顔をしてどうしたの?」


 「あんた、高校生にもなってマジックテープの財布使ってんの?」


 え?ダメなのか。確かに学校の自販機で飲み物を買う時、財布を開ける度に周りの生徒が笑っていた気がする。みんな何が楽しいんだろうとあんまり考えない様にしていたがそういう事だったのか。


 「ハア、後で財布も買いに行こうね」


 「え、僕、そんなにお小遣い持ってきてないよ」

 

 「今の財布だってそんなに高くないでしょ?安い奴でもそれよりかっこいいのあるよ」


 「ほえ~」


 普段買い物などしないので全く知らない。というか越谷さんは男物の財布の事まで分かるのか。流石女子だなあと感心した。そういう間に二人分の料金をキャッシュトレーに乗せた。


 「ちょっと多いよ。私は自分の分出すから」


 「え、いいよいいよ」


 どこで聞いたか忘れたが男子は女子と出掛ける時は基本的に支払うものだとドラマか何かで聞いた気がしたので二人分出したが間違っていたのだろうか。


 「自分は自分の分で出すし、奢るとか考えなくていいから」


 「こ、越谷さん……」


 ニュースで帰りのタクシー代出さない男はカスだよね~と言っている港区女子が出ているのを見てからほえ~と思っていたが越谷さんは自分の分は自分で出すと考えている。流石だ。


 「そうなんだ。ごめん、女の子と一緒に出掛ける事とかあんまりないからさ……」


 「ふ、ふ~ん、そうなんだ」


 そういうと彼女はそっぽを向いて受け取りカウンターまで歩いていってしまった。何かおかしなことを言ってしまったのだろうか。やはりコミュ障には難しい。

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