第13話

 こうして流れで一緒に登校した為、並んでクラスに入る事になる。あれ、これもしかして勘違いされるやつか?僕達がクラスに入った瞬間、何人かの生徒がこちらを見た。僕と越谷さんが並んで歩いているのが不思議なのだろう。


 「お~、春日部おはよう」


 「あっ、本庄君、おはよう」


 席に座って携帯を見ていた本庄君が僕の存在に気付いて挨拶をしてきた。越谷さん以外のクラスメイトに挨拶される事が珍しいので一瞬ドキッとしてしまった。陰キャは急な対応に弱いのだ。


 「あ、越谷さんもおはよう」


 「あっ、はよ……」


 本庄君が越谷さんにも気付いて続けて挨拶をする。が越谷さんが恥ずかしがっているのか返事がそっけない。どうしたんだろう。僕達は後ろの自分達の席に向かう。


 「春日部ってさ……」


 「はいい?」


 席に着いた瞬間、越谷さんから話しかけらたが、また返事が某特命係になってしまったため越谷さんに睨まれた後、ため息をつかれてしまった。僕は何度呆れられたら気が済むのだろうか……。


 「ハア、春日部って何か普通に本庄みたいな明るい人とも喋れてるよね」


 「ええ、結構キョドってると思うけど……?」


 「まあ、それでも、私なんかよりよっぽど喋れてるじゃん」


 言われてみれば越谷さんは僕とは普通にしゃべっているのに、本庄君と話す時は何故かたどたどしい気がする。


 「越谷さん、僕と話す時はこんな感じで普通じゃない。本庄君苦手なの?」


 流石に本庄君が苦手かどうかなどは大声で聞く話ではない為小声で尋ねる。そう言うと越谷さんは顔を下げてしまった。あまり言いたい事を聞いてしまっただろうか。コミュニケーションが下手だとこういう事があるから困る。


 「いや、本庄が苦手というか……。ああいう、明るい人とだと何話せばいいのか分からなくなるっていうか……」


 越谷さんはモジモジと恥ずかしそうにそう答える。なるほど、僕みたいなやつは話を勝手に広げてくれる本庄君みたいな人が助かるが、越谷さんはどうすればいいのか分からなくなってしまうタイプなのか。


 僕は越谷さんがギャルっぽい見た目で敬遠されていると思い込んでいた。しかし、それだけではなく本人の人見知りがこの事態になってしまっているという事なのだろう。


 「まあ、気持ちは分かるよ。僕も面白い事言えてるかなって不安になるし」


 「春日部は面白い事っていうか、変な事ばっか言ってるけどね」


 「え」


 僕は変な事を言っている気が全く無い為、心の底からの疑問で間抜けな声が出てしまった。前から言われているが僕はただの陰キャなんですが……。


 「とうかそれなら僕相手だったら普通に喋れるの?」


 「そ、それは、春日部相手だったらそんな気を使わなくていいっていうか……」


 なるほど、僕みたいな陰キャ相手だったら、適当な事話してもいいと思われているということですか……。まあ、実際、何も気にしていないのでその考えは正しいですね……。越谷さんだけでなく僕まで気分が沈んで頭を下げてしまった。クラスの後ろの方の席で並んで頭を下げていたら変な儀式をしていると思われないか不安になってきた。


 「まあ、そんなに無理しなくてもゆっくり仲良くなって良ければいいんじゃないかな……」

 

 僕は顔を上げて、越谷さんを励ます。


 「別に本庄と仲良くなりたいとか……、まあ、別に春日部と話してれば……」


 越谷さんはそっぽを向いて小声で何かを言った気がするがよく聞こえなかった。

 

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