第12話
土曜日に川口さんと一緒に遊びに行った後の休み明けの月曜日。学校は駅から近いのであまり歩く事がないため楽だが、家から遠い学校へ通っている為電車に乗っている時間が長い。加えて満員電車の為椅子に座れないし混んでいて地獄だ。苦痛な満員電車を耐えきった後、電車を降りて学校までの道を歩く。学校から駅まで10分程なのでそこまで遠くないのが救いである。しかし、朝は苦手だ。まだ眠い為、欠伸が出る。
「ふあ~」
「おおっ、大きい欠伸だね」
「ブフォッ!!」
急に話しかけられた為、ビックリして咳きこんでしまう。誰だと振り返ると越谷さんがよっと手をあげている。大きい欠伸をしている所を見られてめちゃくちゃ恥ずかしい。顔が赤くなっていくのが自分でも分かる。
「ハハ、顔真っ赤。そんな照れることないじゃん」
「い、いやあ、お恥ずかしい所をお見せしました」
恥ずかしすぎるので目線を下げる。目線を下げるとかなり短く折っているのだろうか。スカートから太ももが見える。ダメだと思って首をグルンと旋回させて明後日の方向を見つめる。
「……春日部、何処見てんの?」
「天気がいいからね。風景でも眺めようかと」
「いや、見てる方向石壁とポスターしかないけど」
越谷さんの脚を見ていたと思われたくなくて焦った結果、意味が分からない事を言っていたみたいだ。ちなみに僕の目線の先にあったポスターは【明日を生きる力】という名前のよく分からない自己啓発書の広告だった。
「相変わらず、変な行動して面白いね」
越谷さんはぷっと笑っている。その笑顔が眩しすぎて思わず薄目になってしまう。やっぱりこんな可愛い女の子と話せているなんて嘘みたいだなあとしみじみ感じる。越谷さんがクラスで浮いていなければ僕のようなモブ人間と話す事などなかったのではないだろうか。
「そういえばさあ」
「はいぃ?」
声が上ずってしまい語尾が上がったためか、某特命係の人みたいな返事をしてしまう。越谷さんには伝わらなかったのか何その返事とジト目で見られてしまった。テンパるとよく分からないことする癖直さなきゃ。
「今日の放課後って委員会あるの?」
「いや、今日はないよ。どうしたの?」
何でそんな事を聞いてくるのか、本当に分からなかったため思わず聞き返した。
「いや、春日部さえ良ければなんだけど……」
「?」
越谷さんはもじもじと下を見て考えているようだ。僕は黙って越谷さんの言葉を待つ。
「放課後、一緒に遊びに行かない?」
「Really?」
「れ、れありい」
本当にビックリした。まさか、僕が女の子から遊びに誘われるとは思わなかった。でも放課後僕も何もなくて暇だし可愛い女の子と遊びに行くなど幼稚園の時以来なのだとても緊張する。
「い、いいけど、何処遊びに行くの」
僕がそういうと越谷さんはぱあっと笑顔になりえーとねと考え始めた。どうやら行く先は特に決まっていなかったようだ。
「春日部は何処か行きたい所ないの?」
「え、えーとですね」
考えるが、行きたかった本屋は土曜に行ってしまったし、どうしたものだろう。う~んと悩むが妙案が出て来る様子はない。
「越谷さんこそ行きたい所ないの?」
「え、え~と、買い物行きたいけど、男の子が行っても楽しくないだろうし……」
「買い物か~、何買いに行きたいの?」
「アクセサリーとか服とかだけど……、あっ、映画館とか本屋とか近くにあるし春日部も楽しいって」
「ほほう」
女の子にここまで言わせて恥をかかせる訳にはいかない。ここは男らしく宣言するか。
「了解です。某に荷物運びなら任せてください!!」
何故か、越谷さんに呆れられたが僕の言った事がつまらなかったのだろうか。
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