第11話
大きいぬいぐるみを渡したが歩き周る時に不便だからという事でロッカーに預ける事にした。この後もゲーセンの中を周る事にした。その後はシューティングゲームやレーシングゲームでどちらが順位が上かを競おうと言われたので渋々やる事にしたが両方とも僕が圧勝した。
「やけに強すぎない?」
ゲームを終えて、ベンチで休んでいる時に隣に座る川口さんから尋ねられる。余りにボコボコにしてしまったためか川口さんは少し膨れっ面をしている。少し手加減するべきだったかと内心反省をする。
「まあ、結構ゲーセンに通ってたからね」
「友達とそんなしょっちゅうゲーセン行くことなんてあるの?」
「いや、僕一人で通ってたから」
「え、ゲーセンって一人で行くことあるの?」
「……」
陰キャに対して余りに辛すぎる返しをされて黙ってしまった。その言葉は陰キャに対して凶器だぞ。というか今時ゲーセンに一人で行く人だって珍しくないでしょと心の中で反論したが、必死に説得するのもなんかダサい感じがするので止めた。
「え、何で黙るの。春日部君だって友達くらいいるでしょ」
「全然いないです……」
中学の時の友達だった奴も訳があって連絡を取らなくなったし、高校でもまともに話す人が殆どいない。
「そうなの?たまに反応おかしいけど、私とだって普通に話してるじゃない」
「い、いやあ」
そんな事言われても自分から誰かに話しかける事がないからなあと考えてしまう。相手から話しかけられたら多少たどたどしくなるとはいえ何とか返せるが自分から話しかける用事がないのだ。というか、僕ってたまに反応おかしかったの?
「え、じゃあ学校で誰とも話してないの?」
「うーん、クラスでは一人としか話してないかな……」
「何だ、話しできる人いるんじゃん。それって友達じゃないの?」
「まあ、多分、おそらく……」
越谷さんとは最近よく話しているし、友達といえばそうなのかもしれないが、向こうが僕の事を友達だと思っているかは分からないからなあと内心考えてしまう。こちらが勝手に友達認定するのは何処か恥ずかしさがある。
「まあ、まだ話すくらいで遊ぶ程じゃないって感じかな。じゃあ、今度遊びに誘ってみればいいじゃない」
話していて思ったが何だか僕が友達がいないからと、人生相談みたいになってきている気がする。まあ、僕に友達が出来て欲しいと思ってくれていると思えば嬉しいし大人しく話を聞こう。
「あ、遊びに誘うのか」
「え、そんなに難しい事なの?」
男子を遊びに誘うのにすら一世一代の覚悟が必要なのに、ましてや女の子を遊びに誘うなどプレイボーイしか許されない所業なのではないだろうか。僕が出来る事とは到底思えない。
「大丈夫大丈夫。まあ、距離感に不安があるならもっと仲良くなってからでもいいと思うけど」
「そ、そうかな?」
すぐ遊びに誘えというわけじゃなくて良かった。僕の内気な性格を加味して考えてくれたのだろう。川口さんも優しい人だ。
「ていうか、もしかして私も友達だと思われてないってこと?」
「まあ、委員会で一緒だけど。え、これって友達なの?」
僕がそう言うと川口さんがずーんと暗い顔をしてしまった。いや、委員会で話すぐらいの間柄なんだから微妙な感じなのは確かだろうと思った。
「でも!!今日こうやって一緒に遊んだんだから友達でしょ!!」
「は、ハイッス!!」
川口さんが立ち上がって指を指して宣言してきたので、焦って敬礼をして答える。
「よし!!今日から私達、友達なんだからまた遊びに行くよ。その時は連絡するから」
という訳で連絡先を交換することになった。こうして、僕の日常は少しずつ賑やかになっていくのであった。
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