第7話
お昼食べ終わり、トイレに行って教室に戻ろうとした時の事であった。
「おーい、春日部」
後ろから声をかけられた。振り向くとクラスメイトの
「ほ、本庄君、どうしたの?」
「いや、ちょっと話があってさ」
「?」
「いや、春日部ってさ越谷さんとめっちゃ仲いいじゃん?」
「そ、そうかな?」
成るほど、先ほど一緒に食事をしている姿を見て気になって話しかけてきたという事か。
「ぶっちゃけ、付き合ってんの?」
「ブッ」
僕は思い切り噴き出してしまった。あの越谷さんが僕と付き合う訳ないだろうに。何を言っているんだ。それは彼女に対して失礼なんじゃないのか。
「そんなわけないよ!!」
「あれっ、そうなん?いや凄い仲良さそうに見えたからさ。そうなのかと思った」
もしかして他のクラスメイトも同じようなことを思っているのだろうか。男女がちょっと仲良さそうにしていたら付き合っているだなんてあまりに短絡的すぎやしないかと疑問に思う。
「まあ、いいや。でも春日部って一人でいたいっていうタイプなのかと思ってたけど二人で楽しそうにしてるからちょっと気になったんだ」
一人でいたいタイプに見えていたのか……。それで誰も僕に話しかけに来なかったという事なのだろうか。
「そんな事ないよ。僕だって友達欲しいし……」
我ながら悲しい事を言っている自覚はある。友達が欲しいなら自分から話しかけに行けばいいのだ。それが出来る勇気がないからこんな事になっている。
「ふ~ん、そうなんか。じゃあ、俺達友達になるか?」
「え?」
本庄君の言葉を聞いて目がかっと開く。え、こんな簡単に友達が出来るものなのか。
「どうしたん?」
「え、ええ、是非友達になってください!!」
「お、おう」
僕の剣幕に本庄君がちょっと引いてしまっている。いけない、興奮しすぎた。
「ハハ、お前面白いな」
「ご、ごめん」
「じゃあ、連絡先交換するか」
「は、はいっす」
お互いスマホを出して友達登録をする。こ、こんな短期間で二人の連絡先が追加されるなんて感動する。
「よし、ああ、そういや伝えたいことあったわ」
「?」
「お前、越谷さんと付き合っていないって言ってたけどさ。あの子好きなライバル多いみたいだから気を付けた方が良いかもだぞ」
「え、そうなの?」
「ああ、だって越谷さん可愛いじゃん。ギャルでクールなタイプだから中々声かけに行くやついないけど。春日部と仲良さそうに話しているの見たら他の奴らも声かけに行くんじゃねえのかな」
「そ、そっか……」
本庄君の話を聞いて、僕は立ち尽くす。いや、そもそも僕と越谷さんが付き合えるわけないんだから。そんな話、関係ないと割り切れるはずなのに。この胸のつっかえは何なんだろうか。
「あ、わり、引き留めすぎたな。お前の姫が待っているだろうし、戻った方が良いと思うぜ」
「ぼ、僕のじゃないよ」
「ハハ、わりわり」
本庄君はそういうと、教室の方に向き直り歩きだす。僕も何となく後ろに付いて教室に戻る事にした。
「春日部、トイレ長すぎない?」
教室に戻った途端、越谷さんが机に頭を伏せながらこちらを睨む。
「越谷さん、悪いな。俺が借りてた」
本庄君が越谷さんに向けて声をかける。
「っ、そ、そうなんだ」
「じゃ、春日部、また後でな」
「う、うん」
?後でって、本庄君、僕に何の用なのだろうか。そんな事を考えていると越谷さんがこちらをじっと見ている。
「越谷さん、どうしたの?」
「べっつに~」
越谷さんはぷくっと頬を膨らませていた。何なのだろうか……。
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