アブダクションからのアブダクション!

 うっ…… うぅん…… 


 …………

 …………


 …………はっ!! 


 ここは…… ベーちゃんの宇宙船の中?

 って! 手足を拘束されてる!! 


 またアブダクションからの拘束かよ…… 


 んっ? やたらと開放的な感じがするけど…… おわぁぁぁっ!? な、何でベーちゃんから借りた宇宙船運転用のスーツを着てないんだ!? ぽんぽん、すっぽんぽーん!!


「へへっ、目が覚めたんだね……」


 ベー…… ちゃん? ちょっと目のハイライトが消えているようにも見えて恐いんだけど…… 今、どういう状況なのかな?


「……今は一つ目のワープポイントを越えた所を航行しているよ、ここからは少し遠回りになるけど自動運転でN22星に向かうから」


 N22星に!? ……ベーちゃんの住む星に俺を連れて行ってどうするつもりだ?

 それにナナちゃんとの話し合いも終わってないのに…… 


「へへっ、そうだね…… ハッちゃん……」


 ちょ、ちょっとベーちゃん!? 運転中はスーツを着ていなきゃいけないんでしょ!? 何で脱いで……


「ハッちゃん…… ハッちゃんがあの女が好きっていうのは見ていてよく分かった…… でも仕方ないよね、ウチは何も言わずにいなくなったんだし、いなくなった後にハッちゃんがどう生活しようが、ウチが文句言うのもおかしいしね……」


 あの…… その姿で近付いて来ないで? 俺も健康な男の子だから…… ね? 男の子のオーパーツがオーパーツしちゃうから!


「その間にウチとの思い出がキャトられてしまうくらいの出会いがあっても…… 文句は言えない…… でも……」


 思い出をキャトるって、どういう意味なの!?  ちょっと何言ってるか分からない……


「これは立派なキャトりだよ!! ……ハッちゃんの記憶の中からウチとの思い出が綺麗サッパリ、穴が空いたように失くなっちゃってるんだから! 子供の頃とはいえ、あんなにハッちゃんを大好きってアピールしてたのに! それすらも忘れてしまうくらい…… あの女にハッちゃんの心をアブられて、キャトられて、新たな『ナナ』というチップを埋め込まれちゃったんだから!」


 う、うーん…… 言いたい事は何となく分かるけど『キャトり』っていうワードのせいで猟奇的に聞こえる……


「でもね…… へへっ、ウチ、思ったの…… ハッちゃんが今、あの女を好きだとしても…… そう簡単に諦めるほどウチの『ハッちゃんが好き』って気持ちは小さくないって! だから…… どれだけ時間がかかったとしても、絶対ハッちゃんにウチの事を好きになってもらうんだから!」


 ベーちゃん…… 


「ごめん、ベーちゃん…… やっぱり俺はベーちゃんを家族のようにしか見れないよ……」


「うん、そうだよね、ハッちゃんを見ていれば分かるよ…… でもね? そう簡単に諦めるウチじゃないの…… ここで諦めないのがウチなの! 最後には絶対ハッちゃんを振り向かせるんだから!! ……『ヴィクトリア・V・ヴィクトリー』の名にかけて!!」


 ベーちゃんのフルネームを初めて知ったけど、過激なジャ○プみたいな名前だな! 努力と友情はどこ行った!?


「へへっ、だからね…… N22星に着くまでたっぷり時間もあるし、まずは改めてお互いの事を『色々』知る事から始めよ?」


 さ、更に近付いて来て…… ベーちゃんのオッパーツ…… じゃなくて小ぶりな二つの柔らかピラミッドが!!


「ハッちゃんも初めてでしょ? 大丈夫、ウチもだから…… 忘れられない思い出にしようね」


 おわわぁっ! ……へっ? べ、ベーちゃん? 人差し指の先っぽが光ってるよ? 

その光った人差し指をどうする…… ダ、ダメだって! そこは先っぽ…… 


 ぎゃあぁぁっ!! 指の先っぽと俺の先っぽが触れ合った瞬間、眩しいくらい光輝き始めた!


「うん、これで安心! へへっ」


 な、何したの?


「えっ? 元気になるおまじない…… かな? こうすれば三時間くらい連続でいけるってママから特別に教えてもらったの! 何がいけるのかはよく分からないけど『このおまじないを使ってみなさい? 飛ぶわよ!』って言われたんだよ…… へへっ」


 ベーちゃん! それ、絶対怪しいおまじないだから! 見てみろ! 元気どころじゃないぞ!?


「ハッちゃん…… 凄い…… 」


 ベーちゃん!? 俺の上に乗ろうとしちゃダメだって! ああ、俺のパッツパツなオーパーツがベーちゃんの未確認な所にアブダクションされてしまう…… 


 あっ…… 先っぽが触れて…… D…… T……


「はぁっ、はぁっ、はぁっ…… ちゅぱちゅぱっ……」


 ……んっ?


「……ハッちゃん『ちゅぱちゅぱ』って言った?」


「いや…… ベーちゃんじゃないの?」


「うぅっ…… ちゅぱちゅぱっ……」


 んんっ!? と、扉の所に誰かいるぞ!! あ、あれは……


「なっ! 何であなたがここにいるのよ!!」


 ……ナ、ナナちゃん!? 何で宇宙船に乗ってるの!?


「うぅぅ…… ハイジくんが…… 大好きなハイジくんが別の人に奪われそうになってるのに…… 嫌なのに…… 苦しいのに…… 私ったら何でこんなにドキドキして興奮してるの? うぅっ、ちゅぱちゅぱ……」


 しかもあの独特な形をした飲み口の哺乳瓶を咥えながら俺達の様子を覗いてる!!


「ちゅぱちゅぱ…… ヤダよ…… ハイジくんを取られるなんて…… でも、続きがみたい…… はぁっ、はぁっ…… ちゅぱっ! 『オレ』がいつもよりも美味しく感じちゃう!」


 …………ナナちゃん?


「何? あの変態…… ハッちゃん、あんなのが好きだったの?」


 あんなのなんて言うんじゃありません!! でもナナちゃん、ちょっと…… いや、だいぶおかしいから止めた方がいいよ?


「はわわっ! ハイジくん達に見つかっちゃった!! ど、どうしよう…… あ、あの、私の事は気にせず続きをどうぞ…… いや、ダメよナナ! このままだとハイジくんが奪われちゃうのよ? でもぉ、こんなドキドキ初めてだし…… あぁん、どうすればいいのー!」


 凄い独り言を言ってるけど…… ヘ、変態だぁぁぁー!! ナナちゃんが思った以上に変態で、己の欲望に忠実な子だった!


「ふーん…… じゃあそこで哺乳瓶を咥えて見てなさい! ウチとハッちゃんが愛し合う所を!」


「うぅっ! む、胸が苦しい…… 嫌なのに…… 嫌なのに…… 見たいよぉ……」


 ……ナナちゃん、何か拗らせちゃってない? 好きな人を奪われそうになって興奮しているなんて、まるで…… あっ! これが噂の『寝取られ性癖』というやつか!? 


「じゃあ早速続きを……」


 止めて! ナナちゃんに見られながらなんて嫌だから!


「にゃーん」


 あぁっ! ミケコまで! ほら、ベーちゃん、ミケコもいるから! 止めよう? ねっ? ねっ?


「こうなったら一人二人に見られようがもう変わらないよ、へへっ…… ハッちゃん、大好き……」


 んんんー!? あっ、ファーストキッスが……


「ちゅうぅぅっ!!」


「ちゅぱぁぁっ!!」


 扉の方から聞こえる特殊な効果音付きで奪われたぁ…… ああ、こんな初めては嫌だよ! 誰か助けてー!!


「んにゃん」


 ミケコでもいい! 助けて……




「しょうがないなぁ、ハイジちゃんは」


 へっ? 今の…… 誰の声?


「コラッ! ヴィーちゃん、止めなさい」


 声のする方にいるのは…… ミケコ!?

 えっ? お座りしながら俺達を見ているが…… ミケコが喋った? あははっ、そんなわけ…… 


 あれ? ミケコの尻尾って一本だったよな? 俺の目がおかしいのか三本に見えるんだけど……


「はわわっ! ね、猫が喋った!!」


「ミケコちゃん、あなたまさか……」


 やっぱりミケコが喋ったの!? 


「はいはい、ハイジちゃんが嫌がってるから今日は終わり! 二人とも服を着なさい!」


 ミケコが立ち上がって二足歩行してる!!


 ああ、色々ビックリし過ぎて頭がクラクラする……


「ハ、ハッちゃん!?」


 そして俺は再び意識を失った……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る