『俺のために争わないで欲しいんだなぁ』 byたれを

 ナナちゃんが涙ながらに語った真実…… 


 色々とツッコミ所は盛り沢山だったけど…… えっ? つまり…… 寝取られてなかったってコト?


「バカヤロー! 俺には愛する奥さんと可愛い娘がいるんだ! 浮気なんかするわけないだろ! ……NTR物の読み過ぎじゃないのか?」


 うっ、そう言われてしまうと否定出来ない! ……だってカキヨミとかで流行ってたんだもん! 何かにつけてザマァしてたもん! ト○ロいるもん!


「メ…… じゃなくて、ハッちゃん?」


 ベ、ベーちゃん…… 俺、寝取られてなかったぁ…… 勘違い…… あははっ……


 …………

 …………


 ぐあぁぁぁぁぁー!! 最低! 俺、最低だよ!! 様子がおかしかったとはいえ、話も聞かずにナナちゃんを疑って、信じ切れずにフるなんて…… 最低だよ…… 人間のクズ…… ゴミ…… う○ち……  


「お前の中での『最低』のボキャブラリーが最低だな……」


 元はといえば! アンタが『オレ無しじゃ生きられない』とか紛らわしいことを言うから悪いんだよ!! 何だよ『バナナ・ザ……・オレ』って!! 


「ハッちゃん、騙されちゃダメだよ! 話を聞いている限りこの女…… ハッちゃんの身体目当てじゃない! ヤリモクってやつよ!!」


 そ、そんな訳ない…… よね? ねぇ、ナナちゃん?


「うぅっ!! 今思えば『一目惚れ』というか『一臭惚れ』だったのかも…… しかも美味しそうって…… 本当は摂取したいという気持ちの方が強くて、それを私が勘違いしていたと言われたら…… 否定出来ないよぉ!」


 ナナちゃん!?  うわぁ…… 男が女の子に『身体目当て』とか言ったら最低に聞こえるけど、逆にナナちゃんみたいな可愛い女の子に『身体目当て』だと言われたら…… ドキドキしちゃう!!


「ほら! だから騙されちゃダメだって! 昔から一途に想い続けていたウチの方がハッちゃんのことを大切に思ってるよ! この女みたいに不純で失礼じゃなくて、純愛だよ! ……って、ハッちゃん? 何鼻の下伸ばしてるの!!」


「きっかけは不純かもしれない、だけど今はハイジくんのすべてが大好きなの! …… 隠し事をしてごめんね、許して……」


 幼馴染で昔から好意を持ってくれていたベーちゃん、きっかけは不純とはいえ、俺も好きになり告白したナナちゃん…… 


 ただ…… 何事もなく付き合っていたら間違いなくナナちゃんを選んでいた。

 でも、俺の勝手な勘違いで冷めてしまったナナちゃんへの気持ち…… その隙間を埋めるように現れたベーちゃん……


 俺は一体どうすればいいんだよ!!


 本当にう○ちだ、俺…… もはや『う○ちたれ太郎』に改名した方がいいくらいに!


「ハッちゃんはハッちゃんだよ…… 大丈夫、ウチが全て解決してあげるから!!」


 ベーちゃん!? あっ! その赤い光を放つ筒状の……


「これは『キャトりセイバー』っていう名前で、誰でもお手軽にキャトルミューティレーションが出来る便利グッズなの、これで…… このキャトりおんなのハッちゃんとの思い出が残っている部分をキャトってあげるから! だから心配しないで!」


 し、心配ぃぃぃー!! 待って! 思い出をキャトるって、どういう風に?


「えっ? 脳の一部をちょちょいのクリクリって、くり貫くんだよ? へへっ」


 へへっ、じゃない!! 恐いよ! ベーちゃん、恐いこと言ってるから!!

 しかも脳の一部をくり貫いて無事で済むわけないじゃん!


「大丈夫、ちょっと喋れなくなるか、おかしな事ばかり言うようになるだけだから」


 ちょっとじゃなーい! だいぶヤバいし猟奇的ぃぃー! ハッちゃん、ちょっと見ないうちに過激になったね……


「は、はわわっ……」


「ヤベーよ、ヤベーよ! た、助けを呼んでくる!!」


 チャラ…… じゃなくて、ゴローが逃げ出した! ……あのヤロー!!


「や、止めるんだベーちゃん!」


「ハッちゃんどいて! そいつキャトれない!」


 ひぃぃぃー!! 目がぁ! 目がぁ! 眩しいから目の前でその筒を振らないで!


「ふぅぅ…… こうなったらキャトり剣術の奥義を見せるしかないわね……」


 け、剣術!? しかも奥義があるの!? ……あっ! そ、その構えは!!

 

 十字傷がある方のお知り合いの、突きが得意なやつの構えに似ている! ……そういえば小さい頃にそのアニメの再放送をベーちゃんと二人でよく見てたよな……


「や、止めて下さいぃぃ…… 暴力はダメですよぉ……」


 ほら! ナナちゃんもまたサービス…… じゃなくて腰を抜かしてるから!

 ……って、黒じゃなくてスケスケだったのか!


 ここで皆さんに問題クエスチョンです、じゃあ何故黒く見えているのか? ……熱っ!! 


「ハッちゃん?」


 ひっ! ごめんなさい! ごめんなさい! ジャングルだなんて思ってません!!


「ジャングルってほどじゃないよぉ…… ちょっとした雑木林だよぉ……」


 見ちゃダメ! とかじゃなくて、気にする所はそこ!? ナナちゃん、とりあえず足を閉じようね? ……ちょっとは恥ずかしがってよ。


「このぉ…… あざといメスブタ泥棒猫!! ふぅぅっ…… こうなったらそのジャングルごとキャトってやる!!」


 止めろー! ベーちゃぁぁぁん! 


「はわっ!? はわわぁぁぁー! !」


「キャトり剣術、奥義…… 『閃光』!!!」


 何そのちょっとカッコいい名前の奥義ーーー! しかも思いっきり『あの突き』と同じ動作やん! パクりだよ、パクり!!


 ……キャトり剣術、閃光?

 ……キャトり、閃光? 

 ナナちゃんは体液を吸う宇宙人の子孫……


 うっ! 頭が! これ以上考えるのは危険だ!

 ……こうなったら俺はベーちゃんに反省させるためにダンスでも踊った方が良さそうだな。


「きゃあぁぁん!!」


 大丈夫か、ナナちゃん!?

 ……後ろにコロンと転んだおかげで上手く躱せたみたいだ!! ……スカートがペロンとなってスケおぱんちゅが○見えになっちゃっているけど。


「ちっ!! 外したわ! もう一回……」


 ベーちゃん! ストップ!! きっと話し合えば分かるから!


「いやーん! 服がぁー!」


 ……えっ? えぇー!?

 ナ、ナナちゃんの服の胸元が、奇跡的に斬られて…… はわわっ! ナナちゃんの暴力的なぺぇが…… ギリギリ少年誌に載せられそうなくらい見えている! ……単行本では一部分が加筆修正されるパターンのやつや!


「無駄肉を見せつけないでよ! そんなただ邪魔なだけの贅肉…… 無駄無駄ぁ!! ついでにそれもウチがキャトってあげる!!」


 たしかにベーちゃんはちょっとした膨らみしかなくて無駄がない…… ぴぎゃっ!! ごめんなさい! だからキャトりセイバーの先端を顔に近付けないでって!


「……ハッちゃん? ジロジロ見ちゃダメだって言ったでしょ? あんまり見るようだったら目玉をくり貫くって言ったよね? それに…… 小ぶりだってきっと満足してもらえるもん! 試してみなきゃ分からないでしょ!? この女をサクッとキャトって早く二人で試そう? へへっ……」 


 何を試すんだよ! ちょ、ちょっとベーちゃん? ハァハァ言ってるけど…… とりあえずキャトるとか物騒なことは止めて……


「ナナ! 助けを呼んで来たぞ…… って! なんて格好をしてるんだ!」


「まあ! お取り込み中だったかしら?」


「ナナ、初めから特殊なプレイをしているわね」


 だ、誰!? ……ゴローとかいう人が、ムチムチプリプリなマダムと、金髪ナイスバディギャルを引き連れて帰って来た!


 んっ? 何となくナナちゃんに似ているような気がするんだが……


「ママ! お姉ちゃん! ……お取り込み中でもプレイ中でもないから!」


 は、母親とお姉さん!?  道理で似ているわけだ…… 色々と。


「くっ! 増援が来るなんて…… でも! ハッちゃんは渡さないんだから!」


 ベーちゃん! 服を引っ張るな…… えっ? ……うわっ! うわわっ!! 

 ベランダへと引き摺り出され、何をされるのかと思ったら、眩しい光に照らされ、ふわふわと身体が宙に浮かんで…… この感覚、またアブダクションされている!?


「あれはUFO!? ヤベーよ! スマホ…… また忘れた!!」


「あらあら立派ねぇー、UFOなんて初めて見たわぁ」


「きゃははっ! ナナの彼氏、ジタバタしてるんですけど! 面白ーい!」


「みんな!? それよりもハイジくんを助けてあげてよ!」


 また見せ物にされている! うぅっ…… もうお婿に行けない……


「へへっ、大丈夫、ウチがずーっと一緒に居てあげるから! さっ、宇宙の彼方までレッツゴー!」


「ハ、ハイジくーん!!」


 あわわぁぁぁぁー!! 


 あっ…… また…… い、意識が……


「ハッちゃん! 乗り込み中に暴れると、安全アブダクション装置が作動して、麻酔薬が……」


 ベーちゃん! やっぱりあの時意識を失ったのは…… UFOのせい…… だった…… のか……

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