光る雲を抜けて帰って来たよ、地球
「んにゃーん」
お尻というか尻尾の付け根をペチペチして欲しいのか? よーし……
「んにゃ、にゃ、にゃ……」
ミケコはこれが好きだよなぁ…… 猫ってみんなそうなのか?
「……ぐぬぬっ!」
「ベーちゃん、ちゃんと前を見て」
「あとでウチにもしてね! 絶対だよ!?」
……ベーちゃんのお尻をペチペチするのはいくら何でもマズいだろ。
「にゃーん、ごろごろごろ……」
「ミケコちゃん! 勝ち誇ったような顔でウチを見ないでよ」
また
『ハッちゃん、ウチのママのお尻ばっかり見てる! ダメだよ! はい、ウチのを見て我慢して!』
『あむあむあむっ! ふぅっ…… あっ! へへっ、ハッちゃんが貰ったバレンタインチョコだったけど、お腹が空いてウチが全部食べちゃった、ごめんねごめんね ……だからハッちゃんにはウチが作ったのをあげる! もちろん手作りだから安心して食べてね!』
……思い出したら昔からこんな感じだったわ。
幼馴染で兄妹みたいに育ったから当時はあまり気にしてなかったけど、今になって思えば、ベーちゃんにめちゃくちゃ好き好きアピールされていた!
このままベーちゃんの事を意識しちゃうと、見つめ合って素直にお話し出来なくなっちゃうよ!
「ハッちゃん見てー、向こうに陸地が見えてきたよー」
「……なぁ、今は海の上だから良いけど、もうすぐ陸地に近付くのにこんな低く飛んでいて大丈夫なのか? 『未確認な飛行物体が現れた!』とか大騒ぎになるぞ」
「この宇宙船にはステルス機能もあるし、地球のどんなレーダーでも見つからないようになっているから大丈夫大丈夫!」
ほぇー、さすが宇宙の技術力!
……操作方法はアレだけど。
「もうすぐ日本に着くから高度を少し上げて速度を落とすね」
宇宙から大気圏に突入して、太平洋の真ん中辺りに降下してからあっという間に日本に到着してしまった。
一体どれくらいの速度が出ているのかは分からないが、全くと言っていいほど身体に負荷を感じない。
飛行機が離陸する時ですら『うっ!』となるのに、さすがUFOだ。
「ベーちゃん、本当に話し合いをするだけなんだよな?」
「…………へ、へへっ、そ、そうだよ! キチンとお別れしたのか確認するだけ! さっきのは冗談だよ、冗談!」
キャトるとか物騒なことを言っていたから不安だったけど、もうここまで来たらベーちゃんを信じよう。
「んにゃ」
うんうん、ミケコもそう思うよな。
ほれ、ぽんぽんぽーん!
「んにゃにゃーん」
「ムキー!! 見せつけるようにイチャイチャして…… ズルいよ!」
いや…… 愛でているだけでイチャイチャはしてないだろ。
◇
「はぁっ…… はぁっ……」
こんな身体…… もう嫌だよ……
嫌なのに…… 欲しくて欲しくてたまらないの…… どうしてこんな風になっちゃったの?
こんな風になった私を…… ハイジくんには見せられないよぉ……
「ナナ、口を開けろ」
この匂い、苦手なのに…… 身体は欲しがっている。
「そうだ、いいぞ……」
うっ…… ちょっぴり苦くて変な味…… でも…… 止められない……
「正直に言えよ、本当は好きなんだろ?」
好きじゃない! ……好きじゃないのにぃ……
「ほら、もう少しだ」
早くこの時間が終わって欲しいのに、少し名残惜しくなってしまう…… うぅっ…… やだよぉ……
「……全部飲み込むんだ」
んんっ! んぐっ、んぐっ…… ドロッとして飲み込みづらい…… ああ、でも、美味しい…… っ!!
「よし、今日は終わりだ、また明日も来るからな」
こんな事を毎日のようにしなきゃいけないなんて…… ハイジくんにフラれても仕方ないよね。
本当、自分の身体が嫌になる……
◇
「たしか…… あっ、あの茶色の屋根に白い外壁の家がそうだ!」
「……あれかぁー、ゆっくり近付くね」
「お、おう……」
うわぁ…… 住宅街を家の高さスレスレで飛んでる。
自動回避システムのおかげでぶつからないから大丈夫なんだろうが、見晴らしの良い操縦室で見ているとぶつかりそうでドキドキするな。
「二階の窓に人影が見えるね、だけど宇宙船からじゃ良く見えない…… ハッちゃん、ちょうどベランダもあるし、あそこにちょっと降りてみよっか!」
「えっ!? 覗いてるのがバレるから、さすがにそれはダメだろ!」
「大丈夫大丈夫! スーツの手首にあるスイッチを一回押すと……」
スーツのスイッチ? ああ、これか。
押すとどうなるんだ…… って、あれ? ベーちゃん!? い、いない……
「ハッちゃん、ハッちゃん! へへっ、ここだよー」
うぎゃあっ! い、いきなり何かがしがみついてきた感触がしてビックリした!
誰もいないのに、目の前からはベーちゃんの声がする…… ってことは!
「スーツにもステルス機能が付いてるんだよ、だからこれで覗いていても気付かれないから大丈夫!」
「スーツも…… 凄いな……」
じゃあこれを着ていたら、女湯にもすんなりと入ることが出来るんじゃ…… 痛ぁぁぁい! も、もしかしてベーちゃん…… 首筋に噛み付いた!?
「その顔、良くないことを考えてたよね? ハッちゃんは分かりやすいんだから! どうせ『女湯を覗ける!』とか思ってたんでしょ!」
な、なぜ分かった…… って、おい! どこを触ってるんだ!
「すぅぅ…… はぁぁぁ…… へへっ、ハッちゃんの匂い…… 関係ないけどマツタケってどんな香りがするのかな?」
食べたことないから知らん! あと、それはマツタケじゃない!
「……そっかぁ、食べさせるのが専門なの?」
一体何の話をしているんだ?
……食べさせるのも知らん!
「へへっ…… じゃあそろそろ行こっか」
何が『へへっ』だよ! ……まあいい、覗きなんて趣味じゃないが、ベーちゃんがどうしてもと言うのなら仕方ないな。
「……女湯を覗こうとしてたくせに」
……よし、行くぞ!!
そして俺もスーツのスイッチを押し姿を消すと、ベーちゃんに宇宙船の後方へと連れて行かれ……
「この床にある円の中に入って? そしたらウチがこのリモコンで操作して降下するから…… シークレットモード、ライトアップはオフ、風は停止っと…… へへっ、じゃあ行くよー」
ベーちゃんがスマホ? に似た何かを手に持って操作をしているが…… うわぁっ! 床が消えた!! お、落ちるぅぅーー! ……んっ?
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ? ゆっくり降下するから」
「か、身体が浮いてる!!」
アブられた時のように身体がフワフワと浮いて…… ゆっくりとナナちゃんちのベランダへと向かって降りている! す、すげぇ……
「へへっ、楽ちんでしょ? 宇宙船の乗り降りは基本こうやってするんだよ! あとでハッちゃんにも操作方法を教えてあげるね?」
その教えが必要になる日が…… 来そうで恐い! にゃんにゃん星に連れて行かれるみたいだしな。
ここで逃げ出すって手もあるけど、そんな事をしたらベーちゃんが泣いちゃうだろうなぁー。
ミケコも宇宙船の中でお留守番しているし、逃げるつもりはないけどね。
そうこうしているうちにベランダに降り立った俺達。
そしてベランダの窓から室内をこっそり覗いてみると……
チャラ男のうしろ姿と、その足元に跪いているナナちゃんの姿が見えた。
…………
しかもナナちゃんの頭の位置がちょうどチャラ男のチャラ男付近にあり、何かチュパチュパ言ってるのが聞こえるんですけど! 何ですか、これ?
まさかこれは……
寝取られの音ーー!!
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