宇宙は広いな、大きいな! 

 手足の拘束を解かれ、やっと自由に動き回れるようになったのは良かったのだが……


「マジか…… 俺、本当に宇宙にいるんだな……」


 プロジェクションマッピングかと思ったガラスの外の景色は本物で、ベーちゃんに宇宙船内を色々案内してもらって、その事をようやく実感する事ができた。


「左の扉の先は休憩スペースで、正面に見える扉を開けると操縦室、右にある扉の先はトイレとシャワールームがあるんだよ!」


 ベーちゃんに手を引かれUFOの中を案内された。

 船内には少し形は変だが用途を聞いてみると、俺が普段の生活で使用している物と大して変わらない家具や設備ばかりが揃っていた。

 UFOの中ってこんな風になってるんだ……


「あのさ、ここが宇宙で今UFOの中にいるっていうのは分かったけどさ…… ほら、宇宙って無重力だろ? こう、プカプカーって身体とか物質は浮かぶものなんじゃないの?」


「へへっ、ハッちゃんもそう思うよね! ウチも最初はそう思ってたんだけど、宇宙船にはちゃんと重力を制御する機能も搭載されてるんだよ!」


 ほぇー、宇宙人の技術って凄いんだな…… って! そういえば


「なぁ、今さらなんだけど、ベーちゃんって宇宙人だったのか?」


「うん、そうだよー、生まれたのは地球だけどね」


「そ、そうだったのか……」


 いや、青白いというか水色っぽい肌だし、やけに光輝いている銀髪だなぁとは思っていたけどさ、まさか隣に住む幼馴染が宇宙人だとは思わないよな! 


「……ウチが宇宙人だと分かって嫌いになった?」


「そんな訳ないだろ? ベーちゃんはベーちゃんだ」


「……へへっ、やっぱりハッちゃんはハッちゃんだね」


「俺と同じような事を言ってるぞ…… 」


 それよりさっきからやたらと距離が近い、というか抱き着かれているから歩きづらい。

 久しぶりの再会で喜んでいるのは分かるけどさ。


「へへっ、ハッちゃん……」


 ……よく考えたら昔からこんな感じだったな。

 遊んでいる時もやたらと手を繋ぎたがってたし。


「そういえばベーちゃん、今はどこに住んでいるんだ?」


 宇宙のどこかに住んでいるのは間違いないが、例えば火星とか月とかに住んでいるならUFOで地球まで来るのにどれくらいかかるのか少しだけ気になる。

 ……一番気になるのは俺が地球に無事帰してもらえるのかだけど。


「ウチの家は『N22星』って所にあるんだよ! 覚えにくいから『猫にゃんにゃん』って覚えるのが簡単でオススメだよ!」


 N22星!? 聞いたことないんですけど! ……ってN22くらい覚えられるわ!! 何だよ『猫にゃんにゃん』って! 可愛らしく覚えやがって! 


 N22星…… なんかウルトラなYoメーン、が住んでいそうな星の名前だな…… あれはMか。


「ウル…… Yoメーン…… ハッちゃんって、時々変な事を言うよね」


 猫にゃんにゃん、とか言ってたやつに言われたくないわ!!


「ウル何とかは分からないけど、ウチはどっちかと言うとMかも…… ポッ」


 ベーちゃんのへきは聞いてないんですけど! 


「M…… あっ、お隣さんの星かな? ……そういえばウチの同級生が『隣の星の男達は三分と持たないからつまらない』とか言ってたなぁ……」


 何が!? 何が三分と持たないのかな!? たしかにYoメーン達は三分経てば帰ってたけどね! 何か意味が違うように聞こえたのは俺の気のせいかな!? そうだよね? ……悩める男達のためにそう言ってあげて!!


「ウチはそういうの気にしないから安心してね! ……ハッちゃん限定だけど ……ゴニョゴニョ」


 ゴニョゴニョ言って最後の方は聞き取れなかったが………… ブラザー、良かったな。

 

 ……まっ! 未経験だし、彼女を寝取られたんだけどな! あははっ!


「……で? 感動の再会のために俺をアブダクションして宇宙まで連れてきて、ベーちゃんの目的は何なんだ?」


「…………」


 おい、黙っているけど言えない理由でもあるのか? 


「まさか…… キャトルミューティレーション的なやつをするつもりか?」


「そ、そんなことしないよ!」


「じゃあチップ的なものを埋め込んだり……」


「しないよ!」


「……改造は?」


「しないってば!!」


「ちぇっ、つまんないな……」


「して欲しかったの!?」


 何だよ、人体実験とかサイボーグにされて新たな力に目覚めたりとかしないのか。


 あぁっ!! じゃ、じゃあ……


「……卵を植え付けたりしないよな?」


「ハッちゃんは宇宙人に対しての偏見が凄いよ! ……たしかにそういう種族の人達もいるけどそれは大昔の話で、今は卵を植え付けても母体も子供も安全に出産できるんだよ!」


 い、いるにはいるんだ……


「しかもウチは地球人とほとんど変わらないから子供を産むならちゃんと種付けされないとダメな種族だし……」


 ベーちゃんの話はいいから!! なぜ俺を見てモジモジしてるんだよ!


「ほ、方法も地球人と変わらないよ?」


「あぁっ、聞いてない! そこまで聞いてないから!」


「…………」


 な、何でちょっと怒ってるんだよ!

 話題を変えないと色々マズい気がするから…… えーっと、えーっと……


「な、なぁ、最初に被っていた仮面みたいのは何だったんだ?」


「あれ? ……あぁ、あれは地球でいうヘルメットみたいなもので、宇宙船を運転する時には装着しないと違反になるんだ!」


 う、宇宙船にも交通ルールがあるんだ。


「あと運転スーツも着ないといけないから、仮面とセットになっているのが主流なんだよ! へへっ、ハッちゃんに会うために奮発してハッちゃんの好きそうなカッコいいのにしたんだぁー! ……似合ってたかな?」


 お、おぉう…… に、似合ってたぞ、マジビビりするくらいにはな。


「宇宙船も円盤型の中で最新の一番可愛いやつにしたし、コツコツ貯めていたイェーンがほとんど失くなっちゃったけどね、へへっ」


 ……宇宙人なんだろうけど、言ってる事が地球でもありそうな話で親近感が湧くな。

 

「へへっ、じゃあついでだから地球の周りをちょっとドライブしてみる?」


「……えっ?」


「じゃあ操縦室に行こう! ハッちゃん早く早く!」


「お、おい! 待てよベーちゃん!」


 そして、ベーちゃんの目的が分からないまま、俺達は宇宙船でドライブすることになった。

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