シュコシュコ言ってる幼馴染との再会

「ひっ! ひぃぃぃー!!」


「シュコォォ……」


「た、助けてくれ! 俺をキャトっても楽しくないぞ!?」


「シュコォォ…… シュシュコシュコシュコ……」


 ひぃぃぃー!! シュコシュコ言ってるぅー!!


「シュココ、シュコシュコ…… シュ……」


 シュコシュコ仮面さんが更に近付いてきて俺の身体をベタベタ触ってるぅぅー!!

 あいきゃんとすぴーくシュコシュコ!! だから見逃してぇぇぇー!!


「シュ? シュココ? ……シュコォシュコシュコ…… シュコ!?」


 可愛らしく首を傾げるような仕草をしたシュコシュコ仮面さんだったが、自分の仮面を手で触って、何かに驚いているのか手足をパタパタさせながら慌て出した。


 何だコイツ…… ヤバそうな見た目とは違って可愛らしい動きだな。

 

 そしてしばらく慌てたり、その場でくるくる回り出したシュコシュコ仮面(笑)だったが、突然動きを止めて首元を手で触ると……


「うぅっ…… 恥ずかしい……」


 被っていた仮面が頭のてっぺんから真っ二つに割れて、黒い服の襟にシュルシュルっと収納され、シュコシュコ仮面(笑)の素顔が見えるようになった。


 ふわりと靡く綺麗な銀色の髪、一見不健康そうに見えるがこちらも綺麗な水色に近い青白い肌、そして…… ぱっちりとして吸い込まれそうな金色の瞳…… 


 あれ? こいつ、どこかで見たことあるような……


「うぅぅ…… ハッちゃんとの感動の再会を派手に演出するつもりだったのにぃ…… ウチのバカ! バカバカ!!」


 俺を『ハッちゃん』と呼ぶ人物は一人しか知らないぞ!? えっ? まさか…… もしかして、もしかすると…… 


「あんた…… もしかしてベーちゃんか?」


 すると、さっきまでシュコシュコと言いながら怪しい動きをしていた変な奴が、パーっと満面の笑みで俺に抱き着いてきて……


「ウチのこと、覚えていてくれたんだね、ハッちゃん! 久しぶり! ずっと会いたかったよぉーー!!」


 うぐぁぁーっ!! そんな抱き着きながら激しく身体を揺さぶられると…… 手がぁっ! 拘束された手がもげるぅぅぅー!!


「何も言わずに居なくなっちゃってごめんねぇー! ハッちゃんと離れ離れになるのが寂しくて…… 最後まで引っ越すことを言えなかったのぉ…… ごめんね、ごめんねぇ……」


 だ、大丈夫…… 居なくなった後、すぐに母ちゃんが引っ越したのを教えてくれたから…… だから…… この拘束を解いてくれぇー!! 


「あぁっ!! せっかくウチがのにハッちゃんがグッスリ寝ちゃってたから、念のために安全器具でしっかり固定しておいたのを忘れてた! ごめんね、ごめんね」


 乗せてあげたって…… 連れ去ったの間違いだろ? しかも安全器具というより身動き取れないように拘束する器具にしか見えないんだけど……


「結構揺れるから、寝るならこれくらいしないと危ないんだよ? 知らないの?」


「そんなもん知るか!! そもそも何に乗せられたかすら分からないのに『そうなのか、サンキュー!』とはならんだろ!」


「あっ、そういえばそうだったね! ハッちゃん、とりあえず外を見てみる?」


 外? 窓すらないのにこの状態でどうやって外を……


「えーっと、たしかこのボタンを押せば…… ポチーっとね!」


 すると、何もない銀色の壁だったはずの室内が一瞬でガラスのようなものに変わり、外の景色が見えるように…… って


「えっ? ……えぇぇー!? な、なんじゃこりゃー!!」


 真っ暗な中に見たことのある光輝く丸く青いものが大きく見えるんですけど! 


「あれ…… 地球、だよな?」


「そうだよー! 青くて綺麗だよねー」


 うん…… 確かに綺麗だ。

 だけど、何故この室内から地球の形がハッキリと分かるくらい見えるんだ? プロジェクションマッピング的なやつだよね!? そうだよね!?


「もう! 宇宙にいるんだから本物に決まってるでしょ?」


「う、宇宙ぅぅぅー!?」


「へへっ、そうだよ! ……やっと宇宙船の免許が取れたから、ドライブがてらハッちゃんに会いに来たんだよ!」


 んんっ? ちょっと待てぇ、頭が追い付かないんですけど! 宇宙? 宇宙船? しかも免許が必要なの!? 

 あぁぁっ! 俺、頭がおかしくなったのか!?


「大丈夫! ハッちゃんは昔から変わらないよ!」


 それって昔から俺が頭おかしいみたいに聞こえるんですけど! もしかしてベーちゃん、俺のことバカにしてたの?


「バカになんてしてないよ! ハッちゃんはいつも面白いことを言ってウチを笑わせてくれていたからね、へへっ、ウチはそんなハッちゃんが……」


「それならいいんだけど…… それよりいい加減、拘束を解いてくれよ」


「あぁっ、ごめんね、ごめんね! 今解除するから…… キャッ!」


 おぉーい!! 急に揺れたぞ!? 大丈夫なのか?


「へへっ、大丈夫大丈夫、きっと『自動回避システム』が作動しただけだから」


 何だそのシステムは…… 自動ブレーキなら聞いたことあるけど。


「宇宙にはゴミとか彗星、地球に近い場所なら人工衛星なんかもあるし、そんな中でも操作しないで自動で障害物を回避してくれる便利なシステムなんだよ! ……7年ローンで買った最新型の船なんだぁー! へへっ」


 おぉう…… それは…… 凄いのか? 分からんけど、しかも7年ローンなんだ……


「ウチの免許はオートマ限定だし、おじいちゃんが『ヴィクトリアは危なっかしいから安全装置がたくさん付いているやつにしろ』って、この宇宙船を買う時に少しイェーンを出してくれたんだ!」


 UFOにもオートマ限定とかあるんだ…… あと、イェーン…… って何?


「地球で言う『お金』みたいなものだよ!」


 そうなんだ…… で? ヴィクトリアって誰?


「ウチの名前だよ! 覚えてないの!?」


 スマン、ベーちゃんって覚えてたから…… あれ? よく考えたら名前に『ベー』って入ってなくね?


「それは、ハッちゃんがウチの名前を何度教えても『ヴィ』って上手く発音が出来なくて『ベクトリア』って言うから、いつの間にか『ベーちゃん』になっちゃったんだよ、もう! 忘れちゃったの?」


 ……ごめんなさい。


 ベーちゃんの本名が分かったのはいい。


 それよりも…… ね? ベーちゃん。


「……早く手足を自由にしてくれ」


「あぁっ! 話しに夢中になってすっかり忘れてた! 今解くから……」


 そしてベーちゃんはやっと俺の拘束を解いてくれた。

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