初カノを寝取られた直後、俺はUFOに連れ去られた

ぱぴっぷ

初カノを寝取られました! ……んっ、上?

「ハイジくん、ごめんなさい……」


「ははっ、わりぃな、ナナはオレ無しじゃ生きられない身体になっちまったんだ」


 へぇー…… ふーん……


「あっそ、つまり別れてくれって事だよね? 用ってそれだけ? 分かったよ、さようなら」


「えっ、ハ、ハイジくん!?」


 人生で初めて出来た彼女、ナナちゃんとの別れはあっさりしたものだったな。


 三つ編みに眼鏡でちょっと地味そうな印象だけど、話しも合うし笑うと可愛い、そして何よりおっぺぇがデカイ!

 そんなナナちゃんに惹かれ、仲良くなってようやく告白をして付き合い始めたのに……


 まだ三回くらいしかデートもしていないし、ファーストキスすらまだだったのに、あんな同人誌に出てきそうなテンプレ金髪チャラ男にあっさり寝取られるなんて…… ナナちゃん、見損なったよ。


 ちょっと押しに弱そうな所が気になっていたが、やっぱり注意しておくべきだったな。


 ……まあ今さら何を言おうが手遅れだ。

 最近連絡があまり返って来なかったり、妙によそよそしくなったりと、何か怪しいと感じていた所に、チャラ男に肩を抱かれながら現れたナナちゃんを見て、好きだった気持ちもスーッと冷めてしまった。

 所詮その程度の『好き』だったのかな、俺も…… 


 後ろでナナちゃんが何か叫んでるけどシカトシカト…… はぁっ、でもまさか彼女を寝取られるなんて…… 凄く辛い……


 ああ、泣きそう……


「ハイジくん、待って!」


 うるさいなぁ…… 俺はフラれたんだろ? わざわざ見せつけるようにチャラ男を連れて来て…… そんなにチャラ男が好きなら二人で好きなだけ✕✕✕してろよ。


「ハイジくん! ハイジくーん!」


 俺の名前をデカイ声で連呼するなよ!!

 周りの人に『おじいさんは?』とか『ぺー○ーはいないの?』とか思われるだろ!


「ハイジくん! 上! 上!」


 ……うえ? いやチャラ男のチャラ菌に感染して『ウェーイ!』と言っているだけかもしれないな。


「ハイジくん! 上を見て!」


 ウェーイじゃなくて上? ……伝説のコント番組みたいな『後ろ! 後ろ!』的なやつか? 


「ヤ、ヤベーよ! ヤベーよ!」


「ハイジくーん!」


 チャラ男かと思ったらリアクション芸人だったのか…… あれ? 風が強くなってきたな…… って!!


「な、なんじゃこりゃーーー!!」


 仕方なくを上を向いてみると…… 

 俺の頭上には巨大な謎の飛行物体が!! 


 ……これは円盤型ってやつか? ドローンじゃないよな、パッと見た感じでもバスくらいの大きさはあると分かる…… って、あわわっ! そんな事思っている場合じゃない! 早くこの場から逃げないと!!


 すると、未確認な飛行物体から眩しい光が俺に向かって放たれて…… わ、わわっ! か、身体が宙に浮かんで…… 飛行物体に引き寄せられている!!


「ナ、ナナ! スマホ、スマホ!! 撮影しようぜ!」


「それどころじゃないよ! ハイジくんが……」 


 コラァー! 撮ろうとしてんじゃねー! 俺は見せ物じゃないんだぞ! ……ああ、ヤバいよヤバいよ! 身体がどんどん地上から離れて…… このままじゃ未確認な飛行物体に吸い込まれてしまう!!

 

 そして…… 更に眩しい光に包まれ…… 驚きのあまり…… 俺は意識を……



 …………

 …………



『見てハッちゃん! ……空に浮かんでいるアレ、何だろう? 麦わら帽子?』


『麦わら帽子だと!? 大変だ! もしかしたら俺が預かっているあの大事な麦わら帽子かもしれん!』


『何を言ってるの? ハッちゃんが麦わら帽子被ってるの見たことないよ? また変な事を言って…… でも凄く高く飛んでるね、風に流されちゃったのかな?』


『だけどおかしくないか? あんな高く飛んでるのに、ハッキリと麦わら帽子の形だって分かるのは…… 飛行機とかヘリコプターが飛んでいる時もあのくらいの大きさに見えるぞ?』


『そう言われたらそうかも…… じゃあアレってもしかして……』


『『……UFO!?』』


『ヤ、ヤバいぞベーちゃん! このままじゃアブられてキャトられる! 早く逃げろー!!』


『またよく分からない事を言って…… あっ、待って! おいていかないでよハッちゃーん!!』



 …………

 …………



 懐かしい思い出だ…… 


 たしか小学生低学年くらいの時だったかな? 

 当時の親友『ベーちゃん』と公園で遊んでいた時、空に浮かぶ麦わら帽子みたいなUFOを目撃したのは。


 慌てて二人で俺の家に逃げ込んで、『UFOを見た』とベーちゃんと二人で一生懸命、俺の母ちゃんに説明したよなぁ……


 母ちゃんは見間違いだと思ったのか、俺達の話を笑いながら聞き流していたけど。

 あれから何度もベーちゃんとUFOを探しに行ったけど、あれ以来見ることは出来なかったなぁ。


 そんなUFOを再び見る日が来るなんて…… 五年生の時に転校して疎遠になってしまったベーちゃんに教えてやりたいな。


 って、そうだ! 俺、突然頭上に現れたUFOに吸い込まれて……


「……うぐっ! ……こ、ここは?」


 目を開けて周りを見てみると、銀色の壁や天井の殺風景な狭い…… 室内? だった。


 窓はなく、一ヵ所だけ不思議な形の扉があるだけ。

 確認してみるために身体を起こそうとしたが、ベッドみたいな広い台に手足を拘束されていて動けない!


「何だよ、これ……」


 大声を出して助けを呼ぶ…… のも危険か。

 ここがどこか分からないし、夢じゃなければ俺は光に吸い込まれてUFOの中にいる可能性がある、下手に騒ぐのはマズいかもしれない。


 もしかして宇宙人が俺をキャトルミューティレーションするためにアブダクションしたのかも…… ひぃぃぃー!!


『どうにかして逃げないと! 』


 そう思った俺は、必死に身体を動かしてみたが、金属だけど柔らかい、そんな不思議な物質が手足をしっかり拘束していてびくともしない!


 そうしているうちにこの部屋の扉のようなものが『プシュー!』と勢いよく空気が抜けるような音と共に上方向に開いて……


「だ、誰だ!」


 後ろから差す目映い光のせいでシルエットしか分からないが、人型の何かが部屋に入ってきた!


 そして扉が閉まり、目を凝らしてよく見てみると……


「シュコォォ…… シュコォォ……」


 ゴツゴツした金属で出来たと思われる銀色の仮面を被り特撮ヒーローみたいな黒い戦闘服のようなものを着た…… 人? が、シュコシュコ言いながら俺に近付いてきた。

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