第8話 獣の森・7 戦闘、合成獣(前)

 ハルトマンが合成獣を『ウルフキャット』と呼んだのは、肉食の生物を繋ぎ合わせた合成獣であることを伝えるためだ。レムナスの目の前にいる、レインバードを襲った個体は熊、その両脇を固める個体はそれぞれ狼と虎の首を持っている。どうやら人間を襲うだけの力がある合成獣を造っていたようだが……

(……どこの誰か興味はないが、一度怒鳴りつけてやりたい出来だ)

 レムナスがそう思うのも無理はない。熊の首が付いている個体には豹の腕と体に犬の脚が、虎の首の個体は獅子の体と熊の腕に鷲の脚が付いている。狼は一見何の変化もなさそうだが、よく見ると首、胴、脚で毛色や長さが違う。他の狼や犬と混ざっているのだろう。そして三匹とも例外なく粘液のようなものに覆われている。そして、粘液越しでも分かるほどに繋ぎ目が粗い。これでは弱点を晒しているようなものだ。

(高い敏捷性を持つ猫と強い腕力が特長の熊を合わせたかったのか? どちらも併せ持つ生物を作りたかったと見えるが……個性を殺しているとしか思えないな)

 失望を込めてレムナスがため息を吐くと、それを合図とするように熊頭が吠えた。虎頭と狼頭が一斉に、鋭い牙を剥き出しにしてレムナスへ襲いかかる。当たり所が悪ければ致命傷になるのは確実だ。レムナスはその場から半歩下がると同時に、大きく円を描くように槍を回転させる。槍の石突がちょうど虎頭の横面に当たり、殴り飛ばす形になった。勢いよく吹っ飛んだ虎頭の体が狼頭と激突し、二匹とも派手に転倒する。だがレムナスは既にそちらを見ていない。石突で二匹を殴り倒した後は、すぐにその後ろにいる熊頭へ意識を向けたからだ。

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