第55話

 朽ち果てた魔法図書館の鍵ダンジョンの最下層のボス部屋の門まで到達した俺たちは、いよいよ朽ち果てた魔法図書館の鍵ダンジョンのボスモンスターを倒しに門を開いて中に入る。


 ボス部屋の中は大量の原型を辛うじて留めている本棚がある部屋の中だ。


 そんな朽ちそうになっている本棚には背表紙だけになった本などが置かれているが、やはりほとんどの本は朽ちているのが遠くからでも見て取れる。


 「居ましたね。」


 「あそこに居るよ、ミコト。」


 シルクとティーナが指差しして教えてくれた場所には一冊の本が置かれていた。


 その本の不自然なところは他の本棚の本と比べて一切朽ちていないところだ。


 あからさまに怪しいあの本の正体が朽ち果てた魔法図書館の鍵ダンジョンのボスモンスターであると、感知系スキルを持っているシルクとティーナが教えてくれた。


 「名前はマジックブックです。レベルは15ですね。」


 「このダンジョンの最高レベルか。それにしてもまだ俺たちが気が付いているのに、マジックブックは気が付いていないんだな。」


 未だに本棚の中に古ぼけてはいるが品質の良さそうなマジックブックの背表紙が置かれている。


 マジックブックもフライングブックと同じで浮遊して動き出すのだろう。


 「先制攻撃をしようか。シルクの投擲の後にティーナが魔法攻撃を浴びせてやれ。」


 「分かりました。」


 「分かったよ。」


 まだ本棚に置かれたマジックブックと俺たちとの距離がある中で、マジックブックに対してシルクが投擲用のナイフを投擲した。


 投げられた投擲用ナイフはマジックブックの背表紙に命中する。


 マジックブックの背表紙の表面に投擲用ナイフは突き刺さったのだが、どうやらマジックブックの防御力は思いの外に高いのか、背表紙に深々と突き刺さることはなかった。


 ここでマジックブックも俺たちが擬態しているマジックブックに気が付いていることを理解したようで動き出そうとするのだが、マジックブックが動き出して浮遊しながらその場から離れようとするその前にティーナの【魔力弾】が命中する。


 3発の【魔力弾】が命中したマジックブックは衝撃で吹き飛んで朽ち掛けた本棚に衝突した。


 本棚は朽ちかけていたせいもあって本棚はマジックブックと【魔力弾】の衝撃で破壊される。


 崩れ落ちた本棚のせいで埃や破壊された本棚の木屑が宙を舞うなか、その中からマジックブックが浮遊して現れた。それも魔法陣を展開しながらだ。


 「攻撃来るぞ!!」


 咄嗟に俺はマジックブックの展開した魔法陣を見ながら叫ぶと、マジックブックが魔法陣から魔法を発動する前に周囲を確認するが、何かしらの盾の代わりに出来そうな障害物は見当たらない。


 「全体攻撃が来たら俺が盾になる!!」


 「分かりました。お願いします、ご主人様。」


 「ミコトが攻撃を受けたらすぐにボクが回復するからね!」


 「頼んだ、ティーナ。」


 フェアリーソードと盾を構えながらマジックブックがどんな魔法を発動するのかを警戒していると、崩れ落ちた本棚から現れたマジックブックが魔法陣から魔法を発動して来た。


 マジックブックの魔法陣から放たれた魔法は横向きの風の渦の魔法だ。


 その大きさは魔法陣の射線から離れれば回避するのも難しくはない。これなら防御するよりも回避を優先するべきなのだろう。


 「回避優先!!」


 ここからなら回避を優先すれば回避をするのも不可能ではないはずだ。


 そう思った俺はシルクとティーナに伝えるとすぐに2人は風の渦の魔法の射線から離れるように動き出していた。


 俺もすぐに動き出すことでギリギリでマジックブックの魔法攻撃の回避が間に合いそうだ。


 「ふぅ……間に合った。」


 あと30センチほど距離を取るのが間に合わなければ、俺は風の渦に巻き込まれてしまっていただろう。

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