ワールドダンジョンキー

第43話

　シルクがボス部屋中に最低でも10匹は居るフェアリーの討伐に向かうと同時にフェアリーたちが魔法攻撃を俺とシルクに放って来た。

　盾で完全に防御するには動きを止める必要がある。だが、それをするにはフェアリーの数が多く発動する魔法の数も多くて回避を優先する。

　飛び交う属性魔法の弾の数々。それを俺は躱しながら当たりそうな物だけを盾を使って防いでいく。

　そうして俺が逃げ回りながらフェアリーたちの魔法攻撃を凌いでいる間に、シルクが素早く接近して次々にフェアリーを仕留めて行った。

　ボス部屋の中のフェアリーの数が半分を切った時に、フェアリーよりも一回り大きなフェアリーが現れる。

　あれがこの部屋のボスであるモンスターなのだろう。多分だがフェアリーの上位種だ。

　展開した魔法陣から放たれる魔法はフェアリーの様な単体攻撃魔法ではなく、範囲攻撃の魔法を発動してきた。展開した魔法陣から扇状に風が吹き荒れる。

　「うぐぐっ！？」

　鉄の盾を全面に出して俺は盾の後ろに隠れる様にしてボスモンスターの範囲攻撃魔法を少しでも防ごうとする。

　それでも範囲攻撃魔法を防ぐのには盾の大きさが小さい為、俺の全身に風の攻撃魔法が命中してダメージを受けてしまう。

　「ぐぁあっ！？？」

　インベントリから減ったHPを回復させる為に魔法薬のポーションを飲もうとして取り出そうとしたタイミングで、俺の背中に衝撃が走る。これはフェアリーの仕業だろう。

　どうやらボスモンスターの魔法にはフレンドリーファイアはない様だ。だからこそ、何事もなかった様にフェアリーは俺に魔法攻撃を行なえたのだ。

　俺は痛む背中を我慢しながらインベントリからポーションを取り出して急いで飲み干す。

　「ふぅ、回復できた。」

　ボスモンスターからの魔法攻撃もフェアリーの魔法攻撃もレベルが俺の方が高く、その分だけ能力値が高いこともあってHPを半分にならずに済んだ。

　そしてポーションを飲み干して完全回復した俺は、先ほどまでボスモンスターが居た場所に向かって走り出す。

　そんな俺に向かってフェアリーたちは自分たちのボスを倒させまいと次々に俺に向かって魔法攻撃を行なっていく。

　そうして俺が狙われれば狙われるほどにシルクがフリーになり、それに寄ってフェアリーの数はどんどんと減らして行くのだった。

　「見つけた！！待てぇ！！！」

　ボスモンスターのフェアリーよりも大きなフェアリーを俺は追い掛ける。

　そんな追い掛けて来る俺を止める為にフェアリーたちが魔法攻撃を行ない、ボスモンスターも魔法陣を展開して範囲魔法以外の魔法を放って来ていた。

　単発の魔法なら盾で弾く様にしながら走り近付き、範囲攻撃ならば立ち止まって盾を構えて我慢してからポーションで回復する。

　それを繰り返し行なっている間にあれほど居たフェアリーの姿は完全に居なくなった。

　こうなるともう目の前のボスモンスターに集中するだけで良くなり、俺は目の前のボスモンスターを追い掛けていると、そんな俺にだけ集中したボスモンスターの背後に接近したシルクの武技【ムーンスラッシュ】の一撃がボスモンスターを両断してしまう。

　「お疲れさま、シルク。」

　「ご主人様に意識が向いていたので、私は苦労しませんでしたよ。」

　あれだけ俺だけが狙われていた理由が分からないが、それでもボスモンスターやフェアリーの群れを倒すのに俺は貢献しただろう。

　そしてシルクと協力してボス部屋に落ちているフェアリーのドロップカード集めを行っていく。

　ボス部屋の広さはそこそこあるせいでフェアリーの落としたカード集めはかなり俺もシルクも苦労するのだった。

　「ここまでかな。シルクー！宝箱のところに向かうぞ！！」

　「分かりました！」

　俺とシルクはフェアリーのカード集めを終えて、ハイフェアリーが倒れた場所に現れた宝箱の前で集合する。