第42話
残りはフェアリーを捕食した妖精花もどきだけだ。だが、妖精花もどきはフェアリーを捕食してから動きを止めていた。
「何でフェアリーを食べたんだ。仲間だろう?」
「分かりませんが警戒しましょう。」
俺とシルクはピクピクしている妖精花もどきを警戒しながら、シルクは投擲用ナイフを妖精花もどきに投擲した。
妖精花もどきにナイフが突き刺さる前に蔓の鞭でナイフは弾かれてしまう。
シルクの投擲したナイフが弾かれた事に驚いてしまうが、それよりも大きく驚く出来事があった。それは妖精花もどきの姿が変わった事だ。
2本だけだった蔓の鞭の数が4本に増え、花弁の色が真っ赤に変わり、何よりも妖精花もどきから感じる力が上がった様な気がするのだ。
チューリップの様な花だったのに、チュートリアルの様な花弁が思い切り開いて内部に牙のある口が現れる。
「ギシャァァァァアアアア!!!!!!」
叫びながら妖精花もどきだったモンスターが俺とシルクに蔓の鞭を振るって来た。
俺は自分に迫る蔓の鞭を盾を使って弾いていく。隣のシルクは短剣で切り裂いているようだ。
「なんだ?」
妖精花もどきだったモンスターの花弁が蕾の様に閉じる。あれは何をしているんだ?
「何が来ます!!」
シルクの警戒を促す叫びで俺の意識は妖精花もどきだったモンスターに向かう。
そして蕾の様になった妖精花もどきだったモンスターの花弁が俺たちに向きながら開いた。
すると、妖精花もどきだったモンスターの花から真っ赤な炎が吐き出される。
「なっ!?」
「ご主人様、逃げますよ!!」
俺はシルクに腕を引かれながらその場から距離を取って離れる。そのお陰で妖精花もどきだったモンスターが吹き出した火炎放射器の様な炎に俺もシルクも当たらなかった。
「なんだよ、あれ?!」
「不味いですね。あれじゃあ近寄れません。」
今も凄い勢いで放たれ続ける炎が妖精花の花園を燃やしていく。一定の範囲内しか届かないのがよかった。あれは妖精花もどきと同じ様に移動する事は出来ない。このまま放置でも構わないはずだ。
「シルク、アイツは放って置いて逃げよう。」
「分かりましたが、ご主人様はそれで良いのですか?」
「流石に遠距離攻撃もない俺たちに倒すのは至難の業だ。それにヤバいぞ、あれ!」
まだ遠いがシルクの後ろの空に広がっている黒い集団に嫌な予感しかしない。
シルクも俺が指を刺した方向を見て逃げる事に完全に納得した様だ。
俺もシルクも妖精花もどきだったモンスターを放置して階段がある方向を目指して一目散に走り出した。
それから10分ほどで階段を発見して最終階層の8階層へと向かって行く。
流石に階層を跨いであの黒い大群がやって来る事はないが、それでもついつい空を見上げてしまう。
8階層の探索を息を整えてから開始してそれほど時間も経たずに、俺たちはボス部屋に繋がる門を発見することになる。
「思ったよりも近くにあったな。」
「でも良かったです。もう夕方ですからね。今日はボスを倒してマイルームに帰りましょう。」
「そうだな。そうしよう。」
ボス部屋に入る前にお互いのステータスを確認し、回復の必要があるのかどうかを確かめてから俺たちはボスモンスターとの戦いに向かった。
ボス部屋の中に入った俺たちを出迎えたのは大量に舞う妖精花の花弁と、クスクスと言う何処からか聞こえる笑い声だ。
「シルク。」
「ボスが何処に居るのかは分かりません。ですが、私たちは既に囲まれている様です。」
俺はシルクに言われて周りを見回していくと、俺たちを囲む様にフェアリーが最低でも10匹は見つけた。
これは不味い。あれだけのフェアリーから放たれる魔法攻撃の数々は危険過ぎる。
「ご主人様。ご主人様の身は自分で守ってください。私はいち早くフェアリーを倒す必要があるので行きます。」
「分かった。気を付けろよ、シルク。」
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