第37話

 無限ダンジョンの中で危うくヤりそうになったが、何とか俺もシルクもお互いに落ち着きを取り戻して、いざ出現した宝箱の元へと移動していく。


 口移しでポーションを飲んでいた間に表示されたログでは、あの大きな額に満月のような模様のあるオオカミのモンスターの名前はフルムーンウルフと言う名前なのだそうだ。


 そして流石ボスモンスターだ。経験値がレベル×10倍もボスモンスターから貰えていた。


 それにしても経験値からしてフルムーンウルフは10レベルだったのに強かった。何かしらのボスモンスター補正みたいな物があるのかも知れない。


 そう思いながらフルムーンウルフが最後に倒れた場所に移動すると、そこにはフルムーンウルフの落としたカードにその近くに宝箱がある。


 まずは最初に俺は落ちているカードから拾って確認してみると、カードには白い月のような刀身の短剣が描かれていた。


月狼牙

攻撃力 70

効果 【ムーンスラッシュ】【斬撃強化(中)】【刺突強化(中)】【耐久力強化(小)】【敏捷強化(小)】【月光強化】【月光再生】


 「つよっ!!?」


 「本当に強いですね?」


 元々の月狼牙の攻撃力も高いが、それよりも装備の効果が多くて強い。攻撃力なんて俺の使っている鉄の剣の3倍以上だ。


 それに斬撃攻撃にも刺突攻撃にも補正が掛かり強化され、装備すれば敏捷の能力値にも補正が掛かる。


 他にも月の光を浴びることが出来る場所だと、月狼牙は性能を強化して、しかも刀身が傷付いても再生して復元してしまうようだ。


 「これはシルクが使ってよ。」


 「私がですか?」


 「うん。短剣を俺は使わないし、それにシルクが強くなればその分だけ俺も助かるからね。」


 短剣を使えるくらいの接近戦を俺は出来そうにないし、それなら使えるシルクが使ってくれないと誰も使えないことになってしまう。


 「分かりました。それでは使わせて貰います。代わりに夜はいっぱいサービスしますね。」


 「は、ははは、うん。よろしく。」


 背後から抱き付かれて耳元で囁くように言われてゾクゾクとしながらやんわりと苦笑いしながらシルクから離れる。


 折角、落ち着いて来たのにまた大きくなってしまいそうになる。やっぱり死にかけた事で生存本能が刺激されたのだろうか?


 「ほ、ほら次は宝箱を開けよう。」


 「そうですか、そうですね。」


 とりあえず宝箱を開けるということで意識を変えることにした。宝箱の蓋を開けてみれば、その中には鍵が1本だけ入っていた。


 「これは鍵?」


 「その様ですね。」


 その鍵がどんな鍵なのかは分からないが、メニューの鍵束を選択して鍵を鍵束の中に収納すれば???の鍵と表示される。


 ここから鍵の鑑定をする必要があるのだが今は鍵の鑑定をしなくても良いだろう。これはマイルームに帰ってからやろう。


 「11階層に続く階段を探そうか。」


 「鍵を確かめなくて良いのですか?」


 「マイルームに帰ってからその時にやるよ。」


 「そうですか、分かりました。階段探しをしましょうか、ご主人様。」


 「うん。」


 満月の光が草原を照らすボス部屋の中をしばらく探索していると、ようやく次の11階層に続く階段を俺たちは発見する。


 そして階段を降りた先には木漏れ日が差し込んでいる拓けた森の中だった。


 「ここが11階層……長閑な場所だな。」


 「気持ちの良い森の中ですね、ご主人様。」


 辺りをキョロキョロと見回りながらも俺はインベントリから取り出した記録の杭を地面に差し込んだ。


 これで次からはマイルームから11階層に直接転移して向かえるだろう。


 「シルク、準備できたから今日は帰るぞ。」


 「分かりました。流石にボス戦で疲れましたからね。今日はゆっくり休みましょう。」


 シルクに同意して頷くと、俺はメニューの鍵束からマイルームキーを取り出してマイルームに転移するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る