第35話

 「シルク!」


 「ご主人様、そちらは終わったのですね。」


 シルクはメイド服のあちらこちらが破けてその下の皮膚から流血を少しだけだがしているがまだまだ戦えそうだった。


 「うん!あとはコイツだけだ。戦うアドバイスはある。」


 「攻撃を防がず回避優先でお願いします。攻撃を受ければ、それだけで重さの乗った一撃で吹き飛ばされてしまいます。」


 確かに大きなオオカミのモンスターの一撃で俺はかなり吹き飛ばされてしまった。今の俺だとオオカミのモンスターの一撃を防ぎ切れないだろう。


 体重があるか、もっと盾術の技量を上げるか、ステータスの能力値が高ければそんな事もないかも知れないが。


 俺はシルクの忠告通りにオオカミのモンスターからの攻撃を回避優先で避けながら鉄の剣を振るう。


 振るわれた鉄の剣は問題なくオオカミのモンスターの毛皮を切り裂き、その毛皮に守られた皮膚を浅くだが切り裂けた。


 自分にダメージを与えられるのがシルクだけではない事を理解したのか、オオカミのモンスターはシルクよりも小柄な俺をまずは殺そうとしてくる。


 「シルク!俺が狙われている間に攻撃してくれ!これくらいなら回避のみなら避けられる!!」


 「分かりました。攻撃、当たらないでくださいね。ご主人様。」


 俺はシルクが攻撃しやすい様にするための囮としてオオカミのモンスターからの攻撃を回避していく。


 時折り、俺じゃなくてシルクを狙おうとする仕草をオオカミのモンスターはしてくる。


 だから俺に注意を引くようにしながら俺はオオカミのモンスターと戦わないといけない。


 わざと挑発するようにオオカミのモンスターを攻撃したり、とにかくオオカミのモンスターから鬱陶しいと思われるように足元を彷徨きながら攻撃していく。


 そうする事でシルクに向かいそうになる意識を俺に向けさせて、俺はシルクが攻撃しやすいように行動して行った。


 なんとかオオカミのモンスターからの攻撃を受けないようにしながら、俺とシルクは少しずつオオカミのモンスターにダメージを与えた。


 そして10分が経った頃にオオカミのモンスターは自身の後方にバックステップをして下がると「うぐるぉおおおおおおーーーーーーん!!!!!!!!!!」と咆哮を放った。


 衝撃波が伴う咆哮を放つオオカミのモンスターだったが、オオカミのモンスターが下がったお陰で俺もシルクも問題は耳が痛みを感じる程度で問題はない。


 だが問題なのはオオカミのモンスターから感じる威圧感が倍増している事だ。これは強化されている。


 オオカミのモンスターのHPが一定量減ったことで起きているのか、それともそう言ったスキルや能力を持っているのかも知れない。


 「シルク、まだ行けるか?」


 「問題ありません。このまま倒しましょう、ご主人様。」


 「そうしよう。行くぞ、シルク!」


 「はい、ご主人様!」


 俺とシルクは前に出るオオカミのモンスターへと向かって。そんな俺たちをオオカミのモンスターは睨み付けながら牙を剥き出しにして向かってくる。


 お互いがお互いに向かって進んで行き距離を詰めると、オオカミのモンスターは右腕を振るってきた。


 俺もシルクもそんなオオカミのモンスターの攻撃が当たらない位置に移動して躱すと、オオカミのモンスターは続けてすぐに大きく口を開けて俺を狙って噛み付こうとしてくる。


 それを俺は鉄の盾をいつでも構えられるようにしながら、その場で転がるようにしてオオカミのモンスターの噛み付き攻撃を躱す。


 すぐ近くでオオカミのモンスターの口が閉じて歯と歯が噛み合うガチンッという音が聞こえた。


 そんな音を聞きながらすぐに俺は両手を使って地面から跳ね上がって起き上がると、すぐにどう動くかを決める為にオオカミのモンスターがどうするのかを確認する。

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