第31話

 無傷で迫ってくる2匹のウルフ。そんなウルフの1匹の方が動きが早くレベルが高いのだろう。


 俺は鉄の盾をそのウルフからの攻撃に備えながらもう1匹のウルフを狙って鉄の剣を振るえる準備を行なった。


 来た。タイミングを合わせて飛び上がって来た最初のウルフを鉄の盾で弾くように盾を振るって吹き飛ばす。


 「ギャイン!?」と鳴いて地面を転がっていくウルフをすかさず接近したシルクに後は任せて、俺はもう1匹の突っ込んで来たウルフに対処する。


 もう1匹は低い姿勢で突っ込んで俺の足を狙っているようだ。そんなウルフを俺は鉄の剣をタイミングを見計らって振り下ろすことでウルフの頭蓋骨を切り裂いて倒した。


 これで先ほどシルクが仕留めたウルフを含めて残りは3匹になる。俺はシルクの投擲でダメージを負ったウルフたちを確認すると、そこにはこちらに駆け寄って来ているウルフ2匹しかいなかった。


 どうやら投擲したナイフの当たりどころが良かったのか、ウルフの1匹が痙攣しながら倒れているのが見える。


 あのウルフは時間経過で死ぬだろう。それなら後は向かって来ているウルフたちを仕留めるだけだ。


 「ご主人様、私は左をやります!」


 「分かった。俺は右だな!」


 シルクは左側のウルフを狙い、俺は右側のウルフを狙ってウルフたちの元へと駆け出した。


 ウルフたちは動きが素早いシルクへと意識が向いているようだ。俺はその隙に距離を詰めて鉄の剣をウルフに向かって振るう。


 ザックリと手にウルフを切り裂いた手応えを感じる。この手応えならウルフの背骨まで断ち切れたはずだ。


 現に真っ二つにはなっていないが地面に転がっているウルフの身体はあと少しで二つに分かれるだろう。


 俺たちはまだギリギリで生き残っているウルフたちにトドメを刺すと、ドロップしたウルフのカードを回収してすぐに新しいウルフの群れが来る前にその場から移動する。


 そして移動した俺たちは遭遇するウルフの群れを倒して進みを繰り返し行ない階段にたどり着く。


 今回はまだ10階層へは向かわない。9階層でのレベル上げに集中する為に、フィールドのまだ回っていない場所を目指して進んで行った。


 それからも遭遇するウルフを倒してカードを回収しては移動し、また移動先で遭遇したウルフを倒してカードを回収する。


 そんな事を何度も何度も繰り返し行なってウルフを倒して経験値を獲得していく。


 「ご主人様、あのウルフは普通ではありません。感じる気配が他のウルフとは違います!」


 シルクが言うウルフはあの目の当たりに傷があるウルフだろう。ユニークモンスターなのかも知れない。他のウルフには今まで遭遇してもあんな傷痕なんて一度もなかったのだから。


 「周りのウルフから倒していこう。その後はあの傷痕のあるウルフだ。」


 「分かりました。気を付けてくださいね、ご主人様。」


 「ああ。シルクも気を付けろよ。」


 「はい。」


 そして俺たちはお互いに武器を構えながら接近して来るウルフの群れへの対処を始めるのだった。


 しっかりと腰を落として鉄の盾を構えてウルフの群れの動向を観察していると、シルクがウルフの群れに向かって投擲を行なった。


 それも両手から6本のナイフを投擲後に更に続けて投擲された2本のナイフがウルフたちに突き刺さる。


 だが、その中でも傷痕のあるウルフにはナイフは命中せず、他のウルフにも1本が突き刺さっていれば良い方だった。


 明らかに今までよりもウルフたちの身体能力が上昇している。これは今までにない現象だ。あの傷痕のあるウルフが何かしらの力を持っているのだろうか?


 俺の意識は傷痕のウルフに向いてしまうが、そんな傷痕のウルフは仲間たちを傷付けたシルクに敵意が向いている。


 今なら簡単に俺の攻撃が命中しそうだが、そう簡単には周りのウルフたちが何かしらの行動をするからないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る