第29話

 昨日は途中でマイルームに帰還したが、今回は準備をしたので光源が月明かりしかない夜中の草原でも大丈夫なはずだ。


 夜間の視覚をどうするのかは、これからも暗いフィールドを探索する事があるだろうからとスキルを取得する方向になった。


 取得したスキルは暗視というスキル。自然の暗闇でも明るい場所と同じくらいに見る事が出来るスキルだ。


 このスキルはレベルがない為、これ以上の成長はしない。だが、その代わりに最初から性能が決まっているのでボーナスポイントをこれ以上消費しなくても良いのだから。


 そんな月明かりしかない夜のフィールドをシルクと一緒に歩いていると、ようやくモンスターを発見する。


 「まずは私が投擲をします。」


 「その後は近寄って来たのは俺が相手をするよ。」


 鉄の盾を構え、鞘から鉄の剣を引き抜いた俺は向かって来ているウルフの群れを警戒する。


 そんな中でシルクが両手で3本のナイフを取り出して投擲した。すると、夜の草原にギャンギャンとウルフたちの悲鳴が聞こえた。


 シルクの投擲したナイフが突き刺さった痛みでウルフたちは悲鳴を上げたのだ。今のウルフたちは身体にナイフが刺さって動きが鈍くなっているウルフが多い。


 その中でもウルフの1匹は脳天にナイフが突き刺さって身体を動かすこともしていない。あのウルフはHPが尽きれば即座に死ぬのだろう。


 身体の一部に刺さっているが移動する為の足などにナイフが突き刺さっていないウルフ1匹が俺たちの方へと駆け出してくる。


 それでも動きが鈍くなっているウルフが襲って来た瞬間に、俺は鉄の盾を突き出してウルフからの攻撃を防ぐのと同時にダメージを与えると、一時的に動きを止めたウルフに鉄の剣を振るった。


 ザックリと鉄の剣に切り裂かれたウルフはまだまだHPがあるのか元気だが、俺が追撃の攻撃を3回連続で繰り出して倒す。


 まだウルフは残り3匹残っている。その内の1匹は既に放置していても問題がなく、残りの2匹の内の1匹はシルクが残りのナイフを投擲したことで残りは1匹になる。


 そして最後に残ったウルフは足にナイフが刺さって動きが鈍くなっており、そこから俺とシルクに何も出来ずにウルフは倒されるのだった。


 「視界が効くだけでここまで楽になるんだな。シルクの投擲が外れないし。」


 「しっかりと見えれば動きが分かりますからね。どう相手が動くのかを狙えますから命中率も高くなりますしね。」


 「あ、レアが出た。」


 シルクと話しながらウルフのドロップしたカードを拾っていると、3枚目のカードを拾って確認したらウルフの毛皮ではないアイテムだった。


 手に入ったのはウルフの爪牙。ウルフの牙と爪の目が描かれているカードだが、素材系アイテムなのでポイントに換金するしか使い道がない。


 ちなみに最後のカードはウルフの毛皮だった。


 それからも俺とシルクは夜の草原を探索して進む。8階層から現れるモンスターはウルフだけで同時に現れるのは4匹だ。


 それだけの数だと俺もシルクも余裕にウルフを倒せるが、9階層へと降りてから遭遇したウルフは5匹に増える。


 1匹ウルフの数が増えるだけで戦いに余裕がなくなってしまった。シルクの投擲で動きを止められる数はナイフを投げられる6本だ。


 だから最高で6匹のウルフに命中する事が出来るが、1匹のウルフに1本のナイフだと今のシルクでは回避されてしまう。その為、俺は無傷のウルフを相手にしないといけなくなるのだ。


 1回の戦闘時間が8階層よりも伸びてしまう。伸びればそれだけウルフが増援としてくる事もあり、本当に1回の戦闘で疲労してしまう。


 戦闘後は攻撃を受けていなくても体力を回復させるポーションを毎回飲まないといけないので、ウルフを倒して手に入るアイテムを考えると少しだけ無駄が多くなっているのが現状だ。


 



【暗視】

自然に出来た暗闇を見通せる目を得るスキル

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