第2章 施設での生活

若者サイド

中沢悟は、施設に入るとリビングルームで他の志願者たちと初めての対面を果たした。緊張しながらも周囲を見回すと、彼と同じように絶望を抱える人々が集まっていることに驚いた。幸いなことに、悟はコミュニケーションに問題を感じていなかったので、すぐにみんなと打ち解けた。

杉山翔子との出会い

ある日、リビングルームの一角で本を読んでいる若い女性に目が留まった。彼女は杉山翔子、歳近い女子高生だった。悟はふと、彼女と話してみる気になり、声をかけた。

「何を読んでいるの?」と悟が尋ねると、翔子は顔を上げて微笑んだ。「哲学の本よ。ここに来てから、自分の存在について考えることが多くなって。」

その言葉をきっかけに、二人はお互いの悩みを語り合うようになった。翔子は学校でのいじめに耐えきれず、安らぎを求めてここに来たことを打ち明けた。悟も、自分の将来への不安と絶望を話し、共感し合った。


悟は最初、部屋に閉じこもって過ごそうと考えていたが、翔子との出会いが彼の考えを変えた。二人はリビングルームで毎日顔を合わせ、互いに支え合うようになった。

朝の時間: 毎朝、二人は庭園での散歩を日課にした。翔子は自然の中でリラックスできると感じており、悟もその時間を楽しみにしていた。

「ここに来てから、少しだけ心が軽くなった気がする」と翔子が言うと、悟はうなずいた。「僕もそうだよ。君と話すことで、少しだけだけど希望を持てるようになった。」

二人は共通の趣味を見つけることもできた。音楽が好きな二人は、音楽室で一緒に演奏したり、好きなアーティストについて語り合ったりした。例えば、某ロックバンド等

「いつか、僕たちがここで演奏する姿を誰かに見てもらいたいね」と悟が言うと、翔子は微笑んだ。「それ、素敵なアイディアだわ。」

施設内では他の入居者とも交流があった。塩谷夫妻や会社員の杉村光輝と話すことで、二人は他の人々の物語に触れ、自分たちの選択についても考え直すことがあった。


杉村光輝は、十矢商事で働く会社員だ。彼は出世や上司、取引先との付き合いに疲れ果てていた。出世を目指して一生懸命働き、給与には満足していたものの、婚活に出遅れ、その結果、孤独を感じる日々を送っていた。

「部下たちは家庭を持っているけれど、たまに聞く苦労話を聞くと、僕には耐えられないだろうな…」と、光輝はしばしば考えていた。家庭を持たない自分とは違い、彼らには日々の生活の中での喜びや困難があり、それに耐えながら生きているのだ。

そんな光輝が、この施設にたどり着いたのは、過去の傷やストレスが積み重なっていたからだ。彼の目的は一見不明に見えるが、実際にはここで安らぎを求め、心の傷を癒すためだったのかもしれない。


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