第1章 施設の訪問

「静寂の安楽死施設」


 第1章 施設の訪問


夏の暑い日、永大供養寺・極楽寺は静かに立ち並んでいた。お盆休みだろうか、家族連れの人達が来て線香をあげに来ているのが見える。この施設は安楽死を選ぶ人々に最後の場所提供し、その名声は安らか最後を求める者たちによって知られていた。



大学生の中沢悟はアルバイトで学業を支えながら、内定なしという絶望的な就活の現実に立ち向かっていた。家族関係は良好だが、家族には頼りたくないという気持ちが彼にはあった。


回想


悟、なんだ涼介か。(涼介在学中にできた友人)である。

内定貰ったか?いやまだだよ。超就活氷河期再来の世の中だぞ苦戦しているよ。

だよな〜東大や6大学すら内定が貰えていないと話しは聞いた事がある。


はぁ内定貰えないなら、あそこ(緩和ケアセンター)に行こうかなと呟いた。なんだよそこはと涼介が聞いて来たので某掲示板のスレッドを見せた。

緩和ケアセンター極楽寺・安楽死を迎える事ができる。と掲示板には書かれていた。

眉唾物なのか疑わしいが、絶望感を味わっている中に天から垂れた糸にすがる気分だった。


悟、まさか本当に行くつもりか?

この内定が貰えない。物価上昇、アルバイトでも社会保険料等の値上げで苦しいなか生きていく自信は無い、内定を貰っても平均給与水準はここ20年上がっていない世の中になってしまった。逆に言う止めるなよ真剣な目と冷酷な口調で言った。


スマホにニュースが通知でくる情報に心を痛めた、次の通知は不採用メール、・・・・

無い内定の大学生による自殺等誰かに発見されるまで孤独だ。


回想終了


それに、もうこんな悲観になるのは止めようと考えながらこの施設を訪れた。

彼は未来への不安を抱きながら、ここでの静寂を求めた。



塩谷正弘・妻・弘子は定年退職後、アルバイトをしながらも昨今の物価上昇、社会保険料等、介護保険料増加により、今日のおかずを買うのにも逼迫していた。増税によって暮らしにくい。

特に高齢者となるとアルバイトはあるが短時間労働くらいしか出来ない。米を買うだけでも、1番安くても5kで5000円と米を食うなと言うのかと嘆きたくなる。それ以外にも、おかずや調味料、菓子類を合わせて買い物をすると1万円5000円。高齢者は死ねと世の中は遠回しに行っているのかと絶望感していた。一応、頼る家族は居るが私達がこんなに逼迫しているのに迷惑をかけたく無いと考えていた。



塩谷夫妻は、無理心中をしようかと相談していた。ある日、ケアセンターの噂を聞いて藁も掴むつまりで、公的機関に相談した。結果をいうと安楽な老後を過ごすことが難しいと結論づけた。彼は妻とともに穏やかな最期を迎えるためにこの施設を選ぶ。



一方、女子高生の杉山翔子はいじめに遭い、コミュニケーシが苦手で友人も少なく相談が出来る人が居なかった。家族関係は良いのだがいい意味で希薄。家庭でも学校の問題について話すことが出来ず、一人で悩みを抱えている。学校での絶望的な状況から逃れるために、この施設で平穏な最期を迎えたいと考えている。彼女は若くして命を絶つことを選ぶが、それが唯一の救いだと信じている。




杉村光輝・十矢商事で働く会社員は出世や上司、取引先の付き合いに疲れ果てた。出世を目指して給与には満足していたが婚活に出遅れ婚活に、失敗し孤独を感じる日々を送っている。部下は世帯持ちだがたまに苦労話を聞くとなかなか苦労が堪えなさそうと感じるばかりだ。


私のような者だが、この施設での安らぎを求めていた。彼の目的は一見不明だが、過去の傷やストレスが積み重なって傷を癒すためにここに辿りついたのかもしれない。


川添幸雄施設で働く従業員であり、同時に安楽死を望む者でもあった彼女は日々、安楽死を希望する人々の最期を見届けながら、自身もその道を選ぶ決意を固めていた。


そして探偵・宮本誠。ここで緩和ケアを称して安楽死が行われているという情報を聞きつけ、調査に来た。彼は施設の真実を明らかにするため、独自に調査を開始した。


この施設は、安楽死志願者による寄付等で作られた。公には緩和ケアセンターとして運営されているが、実際には安楽死を迎えた後、葬儀を省いて火葬され、遺骨を永大供養寺に運搬するという形をとっている。そのため、ここでは人々が穏やかな最期を迎えるための場所として機能しているが、同時にその裏には多くの謎と葛藤が隠されているのだった。


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