引きこもり、イカれたヤンキーたちと異世界を救う旅に出る

第2話 「おしゃまな猫耳獣人、リーリア」、出来れば「スキンシップ多め金髪褐色美少女、リカ」、もしくは「黒髪眼鏡っこ委員長、すみれ」

　目を覚まして最初に飛び込んできたのは、魔法使いのようなローブを着た様々なおじさんが僕をのぞき込んでいる姿だった。

　わー、よりどりみどりのおじさんだー。

　僕が目を覚ましたからか、緊張でこわばっていたおじさん達の顔が安堵と喜びの表情に変わった。一番近くのナイスミドルなんて叫びながら号泣しているじゃないか。

　そしておじさんたちは、僕を囲んだまま「成功だー！　成功だー！」と万歳をし始めた。

　なに、この状況……。

「あのー、何が起こったんですか？」

　僕が聞くと、

「説明は国王陛下直々にしてくださるそうだ！　一緒に転移してきた者と共に謁見してもらう！」

　と、号泣ナイスミドルが言った。

　国王？一緒に転移？

　状況が分からず辺りを見回すと、窓がない石造りの部屋にいるようで、左側には僕の周りにあるようなおじさんの群れがもう一つあった。

　そのおじさん達も万歳三唱中だ。

　んー、結局何もわからないね！

　号泣ナイスミドルに聞いてみよう。

「結局何が何だかわからないんですが、まずあなたは……？」

「私は宮廷魔術師のスイナー・ミドルンだ！　君は仲間と共に地球から、このバンフォレスト王国に転移してきたのだ！」

「仲間……？」

　引きこもりの僕に仲間なんていないよね？

　まず友達がいないんだからね、悲しいけども。

「ファイナル・クエスト」も異世界転移したアランが、異世界を救う話だったよな。

　その仲間には色んなやつがいた。

　勝気なビキニアーマーの女騎士、ジェシカ。

　ツンデレ金髪蒼眼の美人エルフ、エレオノール。

　純真な宿屋の怪力看板娘セレナ。

　etc……。

　なんかアラン、女ばっかり仲間にしてるな……。

　――ッ！まさか！！

「おしゃまな猫耳獣人、リーリアじゃないでしょうね！？」

「おしゃまな猫耳獣人、リーリアじゃないな！　君と近しい存在が転移してきたのだ。我々は魔法陣をそう組んだからな！」

　なんで僕はおしゃまな猫耳獣人、リーリアが地球にいると思ってしまったんだろう。

　というか、近しい存在？

　まさか母さんじゃないだろうな……！

　こういう異世界転移には危険な冒険が付き物と相場が決まっているんだ！母さんをそんな危険な目に合わせるわけにはいかない！

　……後、こういう異世界転移にはハーレムが付き物と相場が決まっているんだ！

　後、傷のせいで叩き売りされていた奴隷を回復魔法で治したら美少女で、その子と蜜月の日々を送ると相場が決まっているんだ！

　後、ドラゴン擬人化のじゃロリと友達以上恋人未満な日々を送ると相場が決まっているんだ！

　僕は母さんを危険から遠ざけたいだけなんだ！ほんとなんだ！本心なんだ！

　――さぁ、僕の仲間は誰だ！出でよ！

『ちょっと僕をからかってくるけど、それは好意からの行動だとバレバレのスキンシップ多め金髪褐色美少女』リカよ！

　または、『みんなに突っかかっちゃうけど、僕にだけは自分の弱みを見せてくれてそこから急速に距離が縮まった黒髪眼鏡っこ委員長』すみれよ！

　そんな知り合いはいないけども！

　出来ればどちらかが来てくれ！

　そしておじさんの群れから出てきたのは――、

「ん？　君はガチャくんに殴られかけていた人だよね……？」

　金髪を靡かせ端正な顔をした、ヤンキーの体罰上等リーダーでした。

　僕と近しい存在というか、ただ近くにいただけの人間じゃないか！

　こいつがいるということは、まさかあの仲間たちも転移しているのかな。

　この部屋には見当たらないけど……。

「あ、そうです。ガチャくん？に殴られかけていた小市民です。アキラです」

　あのタトゥーモヒカン、ガチャくんって呼ばれてるのか。

「アキラくんか。俺は『リーダーくん』だ。あいつらが申し訳なかった。悪いやつらじゃ……。いや悪いやつらなんだ。俺が抑えておかないと周りに迷惑が掛かるから、まとめ役をしているんだ」

　ん？

「あの、すいません。そんなことより、もう一度お名前を聞いてもいいですか？」

「ああ、『リーダーくん』だ。それにしてもこれは……」

　リーダーくんは、『どういう状況なんだ？』と言いたげに眉を顰めて周りを見ている。

　やっぱりこの人自分でリーダーくんって名乗ってるよね、間違いないよね？

　リーダーであることに誇りを持ちすぎじゃない？

　僕たちのやり取りを見ていたスイナーが声を上げる。

「陛下がお待ちだ！　そろそろ移動しよう！」

「ちょっと待ってくれ」

　リーダーくんは部屋を出ようと歩き出したスイナ―を呼び止めた。

　スイナーが振り向く。

「ここにいるのは俺たち２人だけか？」

　神妙な面持ちでリーダーくんは尋ねる。

「いや、失った魔力から考えると近場にいた者が後４人、召喚に成功しているはずだ！　しかし座標がズレたのかどこか別の場所に飛ばされた模様！　その辺の対応も含めて、話は謁見の間でしよう！」

「そうか……」

　リーダーくんはそう言うと、難しい顔で黙り込んでしまった。

　えー、絶対僕に絡んできたあいつらも来ちゃってるじゃん。

「ではいいかな？　陛下の許に参ろう！」

　スイナーの音頭と共に、今度こそ僕らは部屋を出るために歩き出した。