第2話 私立相々学園

 学校二日目


 今日は校内見学とこの学校の校則や制度についての説明だ。

 制度はおそらく昨日説明のあった相談室についてだろう。校則は噂程度だけどとても自由と聞いている。

 「校内見学とSP楽しみだな」

 そう話してきたのは席が隣の新川くんだ。

「楽しみだね。でもSPって何?」

「この学校で一人一台配られるスマートフォンみたいなもんだよ。School Phone略してSP。何ができるかはこの後の説明でわかると思う けど学校からの生活費や学校内の支払いとかはSPでやるらしいよ」

「そんな便利なもんが配られるんだな。ゲームとか入れられるのかな?」

「たぶん無理だと思うよ。でもこの学校はスマホ持ち込みできるから自分のスマホでやればいいと思うけどね」

「校内見学楽しみだね~。どんな施設があるのかは知ってるけど、スタジオとか使えるかな~」

「さすがに個人利用はできないんじゃない?ダンス部とかが使ってるだろうし」

「それもそっか~。ちょっと残念だね~」

 周りの人たちも今日の事で盛り上がっているらしい。

「これから校内見学始めるからささっと廊下に並んでね~。ほかの学年の人は授業してるから静かにしてね。学級委員の二人は廊下に出席番号順で並ばせて。」

 そう言われて僕と高橋さんは先頭に行き整列させた。

 前のクラスを見る限り学級委員の前を先生が歩き、先生が説明していく流れのようだ。

「まずはこの学校の特徴の相談室だ各クラスの横に二部屋あって、いろいろな相談ができるよ。この後の制度の話で詳しく説明するから覚えておいてね。次は~」

『どんな感じなのかな?』

『お姉ちゃんから聞いたけどみんながよく使うから予約戦争になるらしいよ』

『そんなに人気なんだ...僕たちは忙しくなりそうだね』

 そう話すとお互い大変な役職になってしまったと苦笑した。

 そんな話をしているうちに校内見学は終わっていた。この後の動きとしては体育館で校則や制度について説明を受けた後、教室に戻りSPを配布し初期設定をして終わりらしい。

「それではこれから校則と制度について説明するからよく聞くように。それでは校則については社会科の石上先生お願いします」

「今年、皆さんの社会の授業を担当する石上です。一年間よろしく。

 それでは校則についてお話します。まずは昨日配布した生徒手帳の三ページを見てください。本校では制服かジャージ、体操着での登校が可能です。先輩たちは体育の授業がある日はジャージ、ない日は制服で登校している人が多いです。次のページを見てください。かばんは自由で各自が用意したものを使うことになっています。また、靴下の色や下着の色も自由です。髪は明るい色でなければ染めることは可能ですがアクセサリー類は禁止です。次のページを見てください。学校には各自の携帯電話を持ってきてもよいですが、School Phoneは毎日持ってくること。School Phoneは毎時の出欠確認に使うため忘れたら欠席となります。次に~」

 この後はしょうもないことしか言われなかった。いわゆる努力義務というやつだ。スマホを持ってこれるのはありがたいな。友達と簡単にチャットを繋げそうだ。

「次に制度のお話です。理科の清水先生お願いします」

「今年、皆さんの理科の授業を担当する清水です。一年間よろしくお願いします。

 それでは制度についてお話します。まずは生活費についてです。生活費とは皆さんの昼食や学校の泊りなどで使えるお金です。これを学校から一年で7万円付与します。利用方法についてはこの後のSchool Phoneの初期設定の際に各担任からお話しします。次に相談室についてです。相談室は完全予約制です。相談相手は同じ学年の学級委員に相談できます。予約方法はSchool Phoneに入っている専用アプリで行います。場所については楽屋か自宅でできます。そしてこの際の楽屋の費用は無料となります。また、その際に相談者のプライバシーを守るために靴箱はSchool Phoneで鍵がかかっており、楽屋はすべての部屋が防音室になっています。相談をするときは一対一のネット通話で行われます。学級委員は常時声で話しますが相談者はカメラ、マイクのミュートは自由です。カメラや声で名前がわかる場合でも大学への報告書では匿名になります。なので、皆さん悩み事が出来たらすぐに相談をして楽しい学校生活を送りましょう。以上です。」

 そんなにしっかりしたものなのかと感銘を受けた。おそらくいじめだったら加害者側にばれたらエスカレートしてしまう可能性があるため家や防音室でできるようになっているのだろう。また、家族間の問題の時でも学校なら親に聞かれることがないから楽屋を使うのだろう。

「ここから役職についての制度について私からお話しします。まず、学級委員もしくは生徒会役員に立候補するには学年順位30位以内である必要があります。もちろん30位以内といってもとってからの有効期限はあります。前回の学級委員決めから次回の学級委員決めの中で1回取っておく必要があります。ほかの委員会については特に制限はありませんが人数は決まっているのでかぶってしまったら当事者間で解決するか、クラス投票制になります。 これで校則と制度については以上となります。この後は各教室に戻りSchool Phoneを受け取り設定をして下校となります。それでは一組から教室に戻ってください」

 ~~~~~

「これからSchool Phoneの配布を行います。出席番号順で前に取りに来てください。」

 教室に戻って少し休憩をはさんだ後に坂柳先生がSPを持ってきてそう言った。僕や新川は出席番号が後ろのほうなので少し退屈をしていた。

「校内見学で見たけどほんとにたくさんの事に使えるんだな。食堂でも使えるし、先生の話だと学校周辺のお店も対応してくれてるらしいし」

 そう、SPに配布される生活費は学校内だけでなく周辺のお店でも使えるのだ。俺も聞いたときはびっくりした。学校内でのみ使えるもの、いわゆるポイントのようなものだと思っていた。

「まあ先輩たちが熱望したんじゃないか?外の飲食店でも使えるようにしてくれって。学校側も地域貢献できるし学校とお店のトラブルが起きたときに優位に立つこともできそうだしね」

「何で優位に立てるんだ?」

「新川~~早く来い」

「呼ばれてるぞ、この話は帰るときにでもしような」

「そうだな」

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 そうして先生はSPを配り終えて初期設定のやり方を教えていた。僕は機械には強い人間なので正直先生の説明なんて聞かなくても初期設定を完了していた。ただこの世には12年生きてきてコンピューターの初期設定をしたことのないやつも存在するし、なんならいままでスマホやゲーム機すら触ったことのない人もいる。そういう人もいるもんだから僕やほかの機械に強い人がわからないところを補完しながら順調に初期設定は進み、終わらせることができた。

「それでは使い方について説明していきます。生活費はもう振り込まれてるはずです、確認してみてください。次に~」

「なあ」

「なんだ?」

「なんでそんなに機械に強いんだ?」

「去年の夏休みにお父さんに連れてもらってパソコン工場でノートパソコンを組んだんだ。そのあとにそのパソコンをお父さんがくれたから扱いには慣れてるんだよね」

「そんなのがあるんだね。僕も行ってみたいな~」

「小学生限定だからもう俺らはいけないよ」

 そういうと新川はわかりやすくがっかりしていた。

「まあ使ってるうちになれるもんだと思うよ。こういうのは。たまに何年も使ってるけど使い方のわからない人もいるけどね」

「...わかった。使いこなせるように頑張ってみるよ」

「あ、そうだ。スマホ持ってたよね?Liリチウム交換しない?」

 (Li:日本で主に使われるチャットや通話のできるアプリ)

「いいよ。これコードね」

 そうこう話しているうちにSPの説明と終学活が終わったのだった。

 そうして僕は新川と帰路に就いた。

 「そういえばあの話まだだったな」

 「ああ、飲食店でうちの生活費を使えるようにすると何で優位に立てるのか、か」

 「あれはそうすることでお店の売り上げが増えるからそうなると思ったからだな。親は生活費の事を知ってるから僕たちに食費は出さないだろ?だからわざわざ僕たちは自分のお小遣いを使ってまで外食しようと思わないだろ。でも生活費を使えるなら外食する人が増えてお店の売り上げが増えると思ったんだよ」

「なるほどね。能條って頭いいんだな。もしかしたらテスト前に教えてもらうことになるかもな」

 新川はすっきりとした笑顔でそういった。

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