菊原慶介の人生⑱

 美晴は手錠をおろした。


「今回は……正当防衛……なんですね? 次はありませんから」


名取はそれを聞いて口角を上げた後、家を出ようとした。


美晴は納得がいかないながらも、


名取の後を追いかけ、大山の父親が声を張り上げた。


「おい、2度も迷惑かけやがってこらぁ! 落とし前つけさせてやる、おい連れて行け!」


「は、はい!」


大山は男たちに両脇を抱えられ、泣きわめきながら奥の部屋に連れて行かれた。


「しかし、相変わらず腕は凄まじいもんだな世界政府公認特殊部隊『HOUND DOG』の元隊員、名取カイト……いや、赤―――」


大山の父親が何かを言おうとすると、名取はそれを制止した。


「おい、俺は名取カイトだ、誰が何と言おうとな」


顔は凄い剣幕だ、


それよりも気になることが今……


特殊部隊?


元隊員って言ってたけど。


「あの、名取さん……今元特殊部隊隊員って聞こえましたけど」


「あぁ? なんだ嬢ちゃん知らないのか? 『HOUND DOG』……与えられた任務を必ず遂行する、狙った獲物を逃さない”猟犬”にちなんだ部隊だ。その中でも史上最強の兵士と謳われた伝説の兵士それがコイツだよ」


「えぇ!」


この人が最強の兵士!?


でも、確かに銃声が1度しか聞こえないぐらいの早撃ち、


部屋の中を暗闇にして多勢を無効化した素早い判断、


正確無比な射撃、


それに、この家に入る前は大男3人を引きずりながら入って来てたし、


最強の兵士と言われても遜色ないかも……


「もういいだろ、俺の事は。とりあえず、後はよろしく頼んだぜ、俺はもう帰るからな」


そういって名取は小走りでどこかへ向かおうとしていた。


「ちょ、ちょっと名取さん!」


美晴はその場を後にして、名取の後を追いかけた。


家の外に出ると、名取の姿はすでに見当たらない。


はやっ!


そんなに急いで何があるんだろうか……


そう言えば、俺には時間が無いとか言ってたけど、


もしかして、持病を持ってるとか?


美晴はしばらくその場で呆然としていた。


名取カイト……まるで台風のような人だったな。


翌日、朝に流れたニュースは1人の人生を変えた―――

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