菊原慶介の人生⑭
名取は取り出した資料を机の上に並べていく。
「SNSで誹謗中傷したコメント、情報を辿っていくと最初にコメントしたのはお前の裏垢であることが判明した、調べもついてるよ」
「そんなことできるわけがないでしょ、一体いくらの労力を必要すると思ってるんですか?」
大山は自信満々に答える。
絶対にバレないと思ってるんだ、
美晴は持ってきたバックをギュッと握りしめる。
警察の自分が目の前にいる罪人を捕まえることができないことが悔しくてたまらなかったのだ。
しかし、名取は不敵に笑った。
「そうだなぁ、1時間もあれば余裕かな?」
「はぁ、1時間?」
「大山隆也、元の名を桐山修吾で、15年前『少女誘拐拉致監禁殺人事件』の主犯の少年K、当時は18歳で事件の4年後、親父さんのコネで俺を紹介された。大山隆也の名義を購入後、事件に関する全ての情報をこちらで削除していた。まだSNSも発展してなかったからな世間から情報を無くすのは単純だ、この事件の情報を知っているのは事件の被害者の家族、被疑者である少年5人、そして俺だけだ」
名取が説明すると、次第に大山の表情から余裕がなくなる。
「被害者の家族は正体を知っているから投稿をしない、無論俺が流すメリットもない、となると必然的に5人の内の誰か……この中で菊原慶介に関係し、かつ情報を流すことで自分にメリットがある人間はたった1人のみ」
美晴は言葉を失っていた。
この人、一体どこまで考えてるの!?
SNSで人を特定することの難しさをこの人はたった1日で解決しようとしている!
「ったく、せっかく俺がお前に関係する情報を全て無くしてやったのに、自分の欲求の為に自分の事件を自分で掘り返すとはな……傑作だ」
大山は机を勢いよく叩きつけ、力強く立ち上がった。
目は血走り、まるで今にもこちらに襲い掛かりそうだ。
これが大山隆也の正体?
「てめぇ! ぺちゃぺちゃ喋ってんじゃねぇぞ!」
「やっぱり……結局、名前を変えようが何しようが、お前は桐山修吾だったってわけだ」
名取は腹を抱えながら笑った。
「うるせぇ! お前らこの男たちを生かして帰すな!」
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