菊原慶介の人生⑫

 SNSの誹謗中傷には火の元が存在する。


美晴はそのことは理解していた。


誰かがその火種を作っている、


だが、その火種を探すのは途方もない労働力、


色んなサーバーを経由し、数万、数十万のコメントや多くのサイトをくまなく探す必要があるからだ。


「その火の元を辿ったってことですか? 一体どうやって」


「別に辿ってなんかいないさ、元々知ってたんだから」


「えっ?」


暗闇の中、名取は歩くスピードを速めた。


知っていた?


何を?


「確証を得たのはあの男の部屋に置いてあった写真だ。その中に俺の知ってる顔がいた」


「えぇっ!?」


「かつて俺が名義を売った男だからな、確か名は桐山修吾だったか?」


桐山修吾……!!!!!


少女監禁事件主犯の少年K!?


「そしてそいつは、菊原慶介の元部下であり、今は課長代理を務めてるらしいな」


課長代理、ということはもしかして、


犯人は……。


「桐山修吾の父親はヤクザ、桐山会の会長で今も一緒に住んでるって情報は得た」


「じゃあ、今向かってるのは」


「無論……」


名取は足を止めた。


「大山隆也だ」


美晴の目の前には巨大な豪邸が広がっている。


大きな門には大きく『桐山会』と書かれている。


家の中にはまだ明かりがついており、微かだが話し声も聞こえる。


「お家に到着~、さてと精算させてもらうとするかな~」


名取はなんの躊躇もなく、インターホンを押した。


先程まで話していた声が突然止む。


美晴はゾッと身の毛がよだつ、


よくヤクザ相手に躊躇なくいけるな。


しばらくすると、スーツに身を包んだ大男が3人、


手にドスのような刃物を持って現れた。


あぁ、私達……殺されるのか。


「おぉ! なんや貴様らは夜中に人ん家にきやがって! ここがどこだかわかって来てんのか!」


「無事に帰れると思うなよこらぁ!」


「あぁ~、どもども、ここに大山隆也っているでしょ? 案内してくれるか?」


「大山……」


大男は次第に耳打ちを始める。


「もしかして坊ちゃんの事か?」


「おそらくな、だとしたらコイツぁ……」


「いるよねぇ、ってことでちょいと失礼するよ~」


そういって名取はズカズカと家の中に入っていった。

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