菊原慶介の人生⑪

「だが清算をする前にしなくちゃな」


名取は携帯を取り出し、どこかに電話をかけ始めた。


「もしもし、猫ちゃん? で、どうだった?」


電話先は名取名義販売所の猫山だ、


何かを確認しているようだが、


会話の内容までは理解できない。


「あぁ~、やっぱり? わかった、ありがとね猫ちゃん、後でデータ送っといて」


名取は電話を切ると、もう一つの携帯を取り出した。


何かを操作した後、取り出した携帯を美晴に渡す。


「せっかくついてきたんだ、おつかいぐらいできるだろ? これの中に入ったデータを近くのコンビニでコピーして来い」


「ちょ、私あなたのお使いじゃないんですけど!」


「別に明日でもいいんだが……時間が無いんだ。今日の内に終わらせておきたくてな」


そう話す名取の顔は少し険しそうだった。


何かを察し、仕方なく携帯を受け取るとコンビニに向かった。


「ったく、なんで私が……え~っと、このデータだったよね……って、え? これって……」


美晴はデータの中身を見て言葉を失った。


中に入っていたのは15年前の『少女監禁』事件の詳細だった。


それも、警察が外部に漏らしていない情報だ。


被疑者の少年5人の名前まで……


どうしてこの人がこの情報を?


いや、この人じゃない。


もしかして、猫山さん?


一体、名取さんと猫山さんって何者!?


そして美晴はこれから名取が行おうとしていることが何となく理解できた。


急いでコピーを済ませ、


名取のもとに向かう。


「名取さん! コピー終わりました」


「よし、それじゃあとは気を付けて帰れよ」


「ダメです」


「なに?」


美晴の目は真剣だった。


「名取さん、精算って菊原さんの事件を解決するってことですよね?」


「わかってんなら聞くな」


名取を歩きを始め、その横を美晴がついて回った。


「どうして、わかったんですか? 携帯に入っていたデータは全て警察の機密情報です! それに……」


「SNSの誹謗中傷、それには必ず火の元が存在する」


歩きながら名取は話を始めた。

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