第42話
「えっと、その、だから…」
言葉が詰まる。
どうしよう。何か言わないといけないのに。
何を言えばいいのか分からない。
「分かってるって。寝ぼけてたんだろ」
「え?」
海斗の言葉に混乱する。
何それ、どういうこと?
「俺のことを翔だと思って告白したんだろ?」
海斗の言葉に、胸が締め付けられる。
…そういう事か。
これでいいはずなのに。
勘違いされて悲しい自分がいる。
私が海斗のことを好きだなんて、夢にも思っていないんだろうな。
やっぱり、告白は無かったことにするしかないのか。
「そ、そうそう。シルエット的に翔先輩かと思ったんだけど、まさか海斗だったとは。いやーびっくりした」
嘘をつく自分が嫌になる。
でも、これ以上傷つきたくない。
「それはこっちのセリフ」
海斗の表情が少しだけ緩んだ。
「授業受けに行ったんじゃなかったの?」
話題を変えようとした。
これ以上自分を惨めにしたくなかったから。
「行ったよ」
「じゃあなんでここにいるの」
時計を見る限り、今は6時間目の途中なのに。
「また戻ってきた」
てことは、私が寝てる間もずっと傍にいたってことだよね。
「どうして、」
なんで、なんのために。
「別に…」
海斗の曖昧な返事に、胸がざわつく。
何か隠しているのだろうか。
「別に、何?」
大した理由じゃないから、言わないのかな。
「そんなことどうでも良いだろ。てか、もう大丈夫なのかよ」
どうしてはぐらかすんだろう。
やっぱり、ただサボりたかっただけなのかな。
「うん。寝たらよくなった」
身体はまだだるいけど、さっきと比べれば断然いい。
「熱は?」
海斗の心配そうな顔が、私の心を締め付ける。
海斗の目に映る自分が、少しだけ特別に感じられた。
「まだある…かもしれない」
あったとしてもそれほど高くはないと思うけど。
「かもしれないって、ちょっと待って」
海斗は私の額に自分の額をそっと寄せた。
突然の行動に驚いて、心臓が一気に早鐘のように打ち始める。
「っ、」
近っ…、
海斗の顔がこんなに近くにあるなんて、息が詰まりそう。
海斗の温かさが直接伝わってきて、頭が真っ白になる。
どうしよう、顔が赤くなっているのがバレたら恥ずかしい。
心臓の音が彼に聞こえてしまいそうで、さらに緊張が高まる。
彼の温かさと近さに、どうしていいか分からなくて、顔がどんどん熱くなっていくのを感じる。
「まぁ微熱ぐらいなんじゃない?」
そう言って、ゆっくりと離れていった。
海斗の温もりが急に遠ざかって、少し寂しさを感じた。
「そ、そっか」
声が震えるのを感じながら、なんとか返事をした。
心臓のドキドキがまだ収まらない。
すると突然、海斗は椅子にうなだれるようにして深いため息をついた。
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