第41話
「ん、…」
目が覚めると、海斗が私の手を握りしめたままベッドに伏せて眠っていた。
彼の温かい手の感触が、私の心を少しだけ落ち着かせた。
時計を見ると、あれから1時間が経っていた。
私が寝たら授業に行くって言ってたのに。どうしてまだここにいるんだろう。
そっか…。
これは夢なんだ。
夢の中でも一緒にいたいなんて。
重症だなぁ、私。
夢の中じゃないと、私のことが心配でずっとそばに居るなんて、そんな事してくれないよね。
そっと海斗の頭を撫でた。
愛おしいって理由だけで海斗に触るなんて、夢の中でしか出来ない。
本当はもっと、海斗に触れたいし、好きって言いたい。
現実では叶わないんだから、夢の中にいる時ぐらい許してくれるよね。
「…雫?起きたか」
海斗が目を覚まし、私の名前を呼んだ。
私の名前を呼ぶ海斗の声が好きだった。
「うん」
心臓がドキドキして、少しだけ声が震えた。
「体調はどうだ?」
私を見つめる海斗の優しい目が好きだった。
彼の目に映る自分が、少しだけ特別に感じられた。
「さっきよりはマシになったよ」
夢の中だからだろうか、少しだけ元気を取り戻した気がした。
「良かった」
そう言って優しく微笑んだ。
海斗のその笑顔が好きだった。
海斗の好きなところが日に日に多くなっていって、その分自分の気持ちに蓋をすることが辛くなった。
だけど…
夢の中でなら、素直になれるのかな。
自分の気持ちに嘘つかなくてもいいのかな。
「雫…?大丈夫か?まだ調子悪いみたいだけど」
海斗の話を途中でさえぎった。
「好き」
思わず口に出してしまった。
心の中でずっと抑えていた気持ちが、言葉となって溢れ出た。
だけど、大丈夫。
夢の中なんだから、きっと私のいいように物語が進むはず。
「…え、」
海斗は驚いた表情で私を見つめた。
「え…?」
なんか思ってた反応と違う、、?
もしかして、夢の中でも振られるの?
聞きたくない。
"ごめん"なんて言葉は聞きたくない。
答えを聞く前に早く目覚めないと…ってどうすれば起きれるんだっけ。
冷や汗が止まらない。
「雫、今の、本当か…?」
海斗の声が震えていた。
目には驚きと戸惑いが浮かんでいた。
海斗の温かさ、声、すべてが現実のように感じられた。
どうしてこんなにリアルなんだろう…
まさか、
「夢…じゃない、?」
現実と分かった瞬間、冷や汗が背中を伝った。
現実の重みが、私の心にのしかかってきた。
心臓が早鐘のように打ち、頭が真っ白になった。
どうしよう、これが現実なら、私の告白は本当に海斗に届いてしまったんだ。
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