第38話

海斗と話さずに一週間が経った。


自分の気持ちを正直に伝えると、好きってバレるし、適当に海斗の納得する理由を考えようとした。


そして、その理由が見つかるまで、私は海斗を避けることにした。


だけど、考えても考えても、まともな理由なんて見つからなくて。


気づいたら、あっという間に時間が過ぎていた。


海斗と話さない日々が続くたびに、心の中の痛みが増していった。


あれから一週間。

今更、会って話すことなんてない。


それなのに海斗は毎時間私に会いに教室にやって来る。


海斗も納得する理由が聞きたいんだと思う。


だから、休み時間は自然と女子トイレで過ごすことが増えた。まだ海斗には会えないから。


昼休み、いつも通り女子トイレに篭っていた。


個室の中で、心の中の混乱を整理しようとしていた。


心の中では、海斗のことばかり考えてしまう。どうしてこんなに好きなのに、気持ちを伝えられないんだろうか。


伝えてしまったら、私たちの関係は終わってしまう。


あの時はなんとも思ってなかったのに、今の私には、この関係が辛い。


「ねぇ聞いた?」


外から聞こえる声に、私は耳を傾けた。


「何?」

別の声が答えた。


「地味子と海斗別れたらしいよ?」


その言葉に、胸が締め付けられた。


別れた…か。


私たちが付き合っていたわけじゃないのに、その言葉がこんなにも痛いなんて。


「マジ?そのこと誰から聞いたの」

驚いた声が続いた。


「みんな噂してる。最近一緒にいるとこ見かけないって」


私たちが一緒にいるところを見かけないのは、私が避けているからだ。


「確かに。言われてみればそうかも」


「王子もやっと目が覚めたんだね〜」


その言葉に、私は涙をこらえるのが精一杯だった。


「はは、それな」


彼女たちの笑い声が響いた。


確かに、このままだと海斗に別れを…契約解除を告げられるのは時間の問題かもしれない。


告白を断るのが面倒臭いから私に偽カノを頼んだのであって、それ以外に利用価値なんてないのに。


女子トイレに籠ったりなんかしてるけど、本当はもう別の候補を探して、教室にも来てないのかもしれない。


心の中で、何かが崩れ落ちる音が聞こえた気がした。


「…教室戻るか、」


私は小さな声で呟いた。


最近寝不足だったからだろうか、泣きすぎたからだろうか、頭がフラフラしてきた。


足元がふらつきながらも、教室に戻る決意をした。心の中では、まだ整理しきれない感情が渦巻いていた。


教室に戻る途中、海斗のことを考えると、胸が痛んだ。



「…もう、ここまでなのかな」

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