第23話

電話の着信音で目が覚めた。


…翔くんだ


「もしもし、」


そういえば、昨日は早く寝ちゃったから、

今日、何時に集合するか決めてなかったんだった。


「雫ちゃん今どこ?」

「家ですけど、」


翔くんはもう着いたのかな。

三時間も前なのに早いな。


「え、もう試合始まってるよ!?」


うぇ!?

ちょ、ちょっと待って、どういうこと?


「嘘、二時からじゃなかったですか!?」


今ので完璧に目が覚めた。


驚きと焦りで心臓がドキドキし始めて、


手が震え、電話を持つ手が汗ばんできた。


「11時からに変更になったんだよ。海斗から聞いてない?」


翔くんの声は優しく、心配そうだった。


「聞いてないです、」


頭の中が真っ白になって、どうしてこんなことになったのか混乱していた。


そうだ、昨日話しがあるって言ってた

それなのに私は聞かずに逃げたんだ、


話って、この事だったんだ。


急いでスマホを確認すると、


昨日の夜、海斗から大量にメッセージが来てた。

電話も何回か。


私は自分の不注意を悔やみ、胸が締め付けられるような気持ちになった。


「とにかく、早くおいで。ちょっとぐらいは見れるはずだから」


そうだ、今はこんなことしてる場合じゃない。


「す、すぐ行きます!」


今から急いで準備して向かったとしても一時間はかかる。


電話を切ると、すぐに動き出した。


心臓がドキドキと高鳴り、焦りと不安が一気に押し寄せてきた。


私は急いで着替え、家を飛び出した。



頭の中では、


どうして昨日、海斗の話を聞かなかったのか、

どうして海斗のメッセージを見逃してしまったのか


自分を責める気持ちが渦巻いていた。


「はぁ、はぁ、」


電車に飛び乗り、試合会場へと向かう途中、私の頭の中には海斗の顔が浮かんでいた。


彼がどれだけこの試合にかけているかを知っているからこそ、応援に駆けつけたい気持ちが強かった。


試合会場に到着した私は、息を切らしながら会場内に駆け込んだ。


観客席を見渡すと、すぐに翔くんの姿が目に入った。


「雫ちゃん!」

「翔くんっ、」


今、何点…


"3対4"


「負けてる…」


試合終了まで、後10分。


私は海斗の姿を探し、彼の背番号を見つけると、


「海斗ー!頑張れー!負けてんじゃないわよ!!」


思わず叫んでしまった。

私の声は会場中に響き渡った。


海斗は、私の声に気づいたように見えた。


「海斗!頑張って!最後まで諦めないで!」

と、私は再び声を張り上げた。


私の声が届いたのか、海斗は一瞬こちらを振り返り、力強く頷いた。


その後も、私は手に汗を握りながら、心の中で叫び続けた。


頑張れ…!


頑張れ海斗…!

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